デジタル技術を活用して、社会や企業の抜本的な改革を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)。
2025年までにDXを推進できなければ、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるともいわれており、
製造業でも取り組みが進んでいます。製造業を営む中小企業経営者の皆さんの中にも、DXという言葉を耳にすることが増え、
「何かしなければ…」と漠然とした不安は持っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、メリットが分からなければ、一歩踏み出すのは難しいものですよね。
そこで今回は、製造業におけるDXの現状はどうなっているのか?推進するメリットは何なのか?事例を含めて解説します。
『2025年の崖』を解説した資料はこちら
1. 製造業のDX化(デジタル化)の現状とは?
製造業は、他業種と比べてDX推進への意欲が高いといわれています。
しかし、2019年に経済産業省が発表した「ものづくり白書(2019年度版)」によると、意欲の高まりは見えていても、
実際に取り組んでいる企業の数は増えていない状況で、本格的な活用はこれから、といった段階でしょう。
製造業のDXでは、『インダストリー4.0』『IoT』『スマートファクトリー』などがキーワードとなります。
『インダストリー4.0』はドイツ政府が2011年の発表した産学連携の国家プロジェクトで、日本語では『第4次産業革命』です。
製造業における、オートメーション化、データ化、コンピュータ化を目指す技術的コンセプトに付けられた名称であり、
メインのコンセプトが『IoT』やAIを活用した『スマートファクトリー』なのです。
『IoT』とはInternet of thingsの略語です。日本語ではモノのインターネットと訳されます。
もともとインターネットはコンピューターとコンピューターをつなぐものでしたが、『IoT』ではモノとインターネットを繋ぎます。
こうすることで、遠隔で物の状況を確認できたり、操作できたりするのです。
身近な例でいえば、テレビとインターネットを繋いでネットコンテンツを視聴したり、
スマートフォンでテレビを操作したりしていることや、
外出先からカメラを操作して子供やペットを見守ることができることも『IoT』です。
『スマートファクトリー』とは、この『IoT』や、
ディープラーニングの登場により飛躍的な進化を遂げたAIなどのデジタル技術を活用することにより、
業務プロセスの改革、品質・生産性の向上を継続発展的に実現する工場であると定義されています。
製造業においては、この『スマートファクトリー』を推進することがDXへの第一歩であるといえるでしょう。
2. DX推進で解決したい製造業の課題とは?
DXを推進することで解決したい、製造業の課題について解説します。
2-1アナログ業務が多く生産性が低い
大手企業や一部の中小企業ではデジタル技術の導入が進んでいますが、手動で機械を動かしていたり、
人が検品や箱詰めを行っていたり、とアナログ業務がメインになっている企業も多く、生産性の低さが課題となっています。
2-2 消費者(顧客)ニーズの激しい変化
インターネットが広まるにつれて、消費者(顧客)は大量の情報を簡単に手に入れられるようになりました。
スマートフォンの浸透は、さらにこの勢いを加速させたと考えられます。
より簡単に、たくさんの情報を手に入れられるようになったことで、
消費者ニーズの変化スピードも格段に上がっています。これまでと同じスピード感で商品を開発し、
それを作る工場を整えてると、完成した頃には消費者ニーズがもう次へと進んでいってしまっている可能性もあるのです。
2-3 深刻な人手不足
経済産業省が2017年12月に発表した「製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について」によると、
製造業を営む企業のうち94%以上で人手不足を感じているとされており、34%はビジネスにも影響が出ていると答えています。
このように、製造業では深刻な人手不足が問題となっていることがわかるでしょう。
製造業の人手不足の原因には
・人口減少、少子高齢化による労働人口の減少
・製造業に対するネガティブなイメージ
の2点が大きく関係しています。
・人口減少、少子高齢化による労働人口の減少
労働人口の減少により、製造業に限らず、日本全体として人手不足が進んでいます。
パーソル総合研究所が2018年に発表した「労働市場の未来推計2030」によると、
2030(令和12)年には、644万人の人手が足りなくなり、そのうち製造業では38万の人手が不足するとされています。
新型コロナの影響によって緩和されるかと思われた都市部への労働力集中の状況は変わらず、
地方の労働人口の減少はより深刻です。また、団塊の世代(60代~70代)が引退してしまうタイミングも重なり、
この世代交代も労働力人口の減少に拍車をかけているといえます。
この人手不足をカバーする方法としては、労働人口を増やすことと、生産性を上げて労働力需要を減らすことの2つが考えられます。
既に人口が減少し、超高齢化社会になっている今の日本の状況で、すぐに国内の労働人口を増やすことはできません。
期待された外国人労働力を増やす対策については、新型コロナの影響でさらに難しい状況にあるといえるでしょう。
このような状況により、日本では今、生産性を上げて労働力需要を減少させる取り組みが求められています。
・製造業に対するネガティブなイメージ
日本全体が人手不足に陥る中、製造業に追い討ちをかけるのが、製造業に対するネガティブなイメージです。
バブル崩壊後は海外メーカーとの競争が激化し、価格競争にも巻き込まれるようになり、
海外へ製造拠点が移動することも多くなりました。
その結果、製造業の大手企業が倒産したり、大規模なリストラが行われたり、製造業で働く上での不安要素が増えてしまったのです。
工場現場で働く上でも、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)のイメージは拭いきれません。夜勤や早朝勤務などのシフト制労働が多く、
休日も土日固定ではなくシフト制であることも多い上、急な需要拡大に合わせて休日出勤を求められるイメージが強いこと。
扱う製品にもよりますが、工場現場は暑さ寒さ、湿気乾燥などによって快適ではなかったり、
キレイとはいえない環境であったりするイメージがあること。
機械の操作などによって怪我をする可能性があり、危険なイメージがあること。
こうしたイメージが、現代の若者が希望するライフワークバランスの整った労働環境とかけ離れているため、
製造業に人が集まらない原因となってしまっているのです。
2-4 進まない技術の伝承
製造業では、人員を確保するだけではなく技術の伝承が必要な場合が多いです。
人手不足とも関連し、人材育成に人員を割けないことからも、なかなか技術の伝承が進まないという問題も抱えています。
団塊の世代の退職も、技術の伝承に大きな影響を与えているでしょう。
中小企業では、技術だけではなく、後継者不足も大きな課題です。
3. 製造業がDXを推進するメリットとは?
製造業がDXを推進することにより、低い生産性や人材不足などの課題が解決できる可能性が高いです。
この章では、製造業がDXを推進するメリットについて解説していきます。
3-1生産性の向上が目指せる
製造業がDXを推進することによって得られる大きな成果は、業務効率化による生産性の向上です。
まずはスマートファクトリーをはじめとする工場内の業務効率化がスタートですが、
それだけに限らず、顧客や仕入れ先を含むサプライチェーン全体の生産性を高めることができるようになります。
生産性が高まれば、労働力需要を抑えることができ、人手不足を解消することができます。
休日も取得しやすくなり、夜勤や早朝勤務に入る回数が抑えられれば、働きやすさも改善されるでしょう。
また、遠隔操作で機械を動かすことができれば、危険や厳しい労働環境からも解放されることが期待されます。
技術の伝承についても十分に時間が割けるようになりますし、技術の伝承自体を機械が行える可能性もでてきています。
3-2消費者(顧客)ニーズに合わせた商品開発・製造ができる(競争優位性の獲得)
消費者(顧客)に関する様々なデータを収集・分析することで、今本当に求められている商品の開発・製造が可能になります。
製品の性能や品質を高められるだけではなく、市場における自社の立ち位置や評価をリアルタイムに収集・分析することで、
自社製品の強み弱みを認識し、競争力の高い商品作りにも役立てられるのです。その上で、製品の品質の安定化が図れます。
DX推進によって競争優位性の獲得が可能になるといえるでしょう。
3-3激しい消費者(顧客)ニーズの変化にもスピード対応可能
デジタル技術の力を借りなくても、時間をかければ消費者(顧客)ニーズをとらえることは可能かもしれません。
しかし、消費者ニーズは短期間で激しく変化していきますので、
ニーズの把握から商品化・製造販売までを短期間で実施する必要があります。
また、商品を増産することになったとしても、短期間での対応を求められます。
このような状況下において、スピードは欠かせない要素です。
DXの推進では、このスピードにも対応できることが大きなメリットになります。
h4. 製造業のDX化(デジタル化)推進事例
DXとは社会や企業の抜本的な改革を目指すことですので、一気にそこを目指すのはハードルが高いです。
この章では、DXへの一歩であるデジタル化の事例をメインにご紹介します。
4-1 検品・出荷作業の自動化
製造業の工場おいて、検品・出荷作業にかかる手間隙、そして対応する人員の確保は大きな課題です。
AIの画像認識を用いて、数百万枚にも及ぶ画像を学習させ、
製品の小さな異常も検知できるようにすることで、検品作業の自動化が可能です。
それだけではなく、商品の入出庫の自動化、ピッキング作業の最適化、配送仕分けの自動化などを行うこともできます。
こうした作業を自動化することにより、担当人員を10分の1にまで減らした事例もあります。
4-2 工場の設備保守業務の自動化(異常検知システム導入)
工場の機械が故障することは、納品に支障をきたすだけでなく、思わぬ事故にもつながります。
小さな異常をいち早く察知することで、大きな故障が起こるのを防ぎ、
修繕に必要な部品や消耗品の発注を早め早めに行うことで、工場の稼働停止を最小限にすることができます。
工場内に複数のカメラを設置し、画像解析を行うことで異常検知ができるシステムを導入。
監督担当者に異常を知らせるのはもちろん、生産状態も通知してくれるので、遠隔でも管理が可能です。
AIはこうしたカメラの画像を蓄積していくことで、さらに精度の高い異常検知が可能になり、
不具合が発生した時の原因究明スピードも高めることができます。
4-3 技能のデジタル化
製造業では技能の伝承が課題となる中、IoTを活用した熟練技術者の技能伝承を支援するシステムも登場しています。
熟練技術者と訓練者の技能をデジタル化し、比較・分析することで、
熟練技術者の動作や工具の使い方などをデジタル化・モデル化し、より早く多くの訓練者に対して技能を伝承できるのです。
4-4 需要予測による在庫の最適化
過剰在庫は経営を圧迫します。また在庫が不足することで商機を逃してしまう可能性もあるでしょう。
これを解決できるのは、AIを活用した需要予測システムです。
需要予測については、担当者の経験値に依存するという属人的な方法が取られている企業も多いですが、
過去の売上や在庫数などのデータを大量にAIに学習させることで、より早くより合理的な判断を下すことが可能になるのです。
4-5 商品の電子カタログ化で、アプローチ強化とニーズに合った商品開発を実現
カタログを電子化することで、顧客へのアプローチ強化が可能です。
カタログを電子化すると、顧客はダウンロードする手間もなく、
いつでも最新情報にアクセすることができるのが、まずは大きなメリットでしょう。
企業側としてはログデータの収集・分析をすることが可能に。
このデータを元に、顧客ニーズに合わせた新しい商品の開発ができるようになります。
配信数が増えても、コストがほとんど変わらないのも嬉しいポイントです。
商品カタログが冊子であるという企業はもちろん、
ダウンロード形式でカタログデータを提供している企業であっても活用の価値があるでしょう。
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5.まとめ
従来の方法では、少子高齢化に伴う人手不足や、技能伝承問題を解消することは難しいといえます。
また激しく変化するニーズに対応することもできなくなるでしょう。
製造業の中小企業においては、まず工場のデジタル化を進めることが急務であるといえます。
ただし、どの形で進めるのが良いかを判断するのは非常に難しく、一気に導入をしてしまうと、
うまくマッチせず、コストだけがかかってしまう可能性もあります。
しっかりと検討をした上で、スモールスタートでトライアルし、全体の導入に進めてください。
製造業全体で国際的な競争力の低下が懸念される中、業界全体でDXを推進しすることで、
生産性UPと顧客満足度UPを目指していきたいですね。
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資格
一般建設業 東京都知事許可(電気通信工事業):(般-4)第148417号
古物商 東京都公安委員会許可(事務機器商):第304361804342号
労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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