デジタルのデータは紙の記録よりも改ざんされやすいという弱点があります。
したがって、文書が電子的な形式でのみ存在する場合、そのセキュリティを確保するための措置を講じる必要があります。
そのために重要なのがタイムスタンプです。
電子帳簿保存法によれば、タイムスタンプは電子契約やスキャナ管理には欠かせないものとして規定されています。
この記事では、タイムスタンプの概要や信頼性、使い方などについて解説します。
タイムスタンプとは
タイムスタンプは、文書に電子的なスタンプを押して、文書が作成されてから変更されていないことを証明するために使用される技術です。
この方法は、電子文書の信頼性を確立し、改ざんされないことを保証するために使用されます。
タイムスタンプは、デジタル取引、特にデジタル契約の分野では重要な証明であると考えられています。
電子データによる契約は手軽で効率的な一方、痕跡を残さず改ざんできることが問題視されていました。
効率を維持したまま信頼性を確保するため、特別な技術が求められていたのです。
タイムスタンプは電子契約の信頼性と安全性を確保するための技術といえます。
タイムスタンプは時刻認証局(TSA)によって付与されます。
タイムスタンプの付与は、その真正性と信頼性の証明に役立ちますが、タイムスタンプの付与以前に改ざんされていないことを保証するものではないことに注意することが重要です。
タイムスタンプの信頼性を保証する要素
タイムスタンプの信頼性は以下のような要素によって保証されています。
時刻認証局
時刻認証局は一般財団法人日本データ通信協会に認められた期間であり、タイムスタンプを発行する役割を担います。
発行希望元の企業とは関係なく、中立的な立場からタイムスタンプを付与する第三者機関です。
正式に時刻認定局として認定されているのは、以下の5サービスのみです。
- アマノタイムスタンプサービス3161
- セイコータイムスタンプサービス
- TKCタイムスタンプ
- サイバーリンクス タイムスタンプサービス
- MINDタイムスタンプサービス
ハッシュ値
ハッシュ値とは、ハッシュ関数によって元のデータから生成される値です。
ハッシュ値を元のデータに戻すには膨大な計算が必要なため、ハッシュ値から元のデータを特定することは非常に困難であると考えられています。
ハッシュ値の性質として、入力が全く同じであれば、常に同じになる点が挙げられます。
しかし、元のデータが少しでも違えば、ハッシュ値も変わってしまいます。
このことからデータをハッシュ値に変換しておくと、第三者である時刻認証機関にデータを転送する際により安全にデータを保護することができます。
タイムスタンプが証明するもの
タイムスタンプは以下のような内容を証明します。
データが改ざんされていないこと
タイムスタンプは、電子記録に保存されたデータの「真実性」を保証するための仕組みです。
「真実性」とは、記録が改ざんされていない事実を検証・確認できることを意味します。
近年導入された「電子帳簿保存法」では、税務関連書類のデータ保存について厳格な対応が求められています。
この規制は、事業者に「真実性」と「可視性」の両方を確保することを求め、電子記録の保存と利用に反映させなければならないとしています。
可視性とは、データにアクセスする法的権利を有する者が、記録を見ることができなければならないという要件です。
データが作成された時刻
タイムスタンプには、文書が作成された日時を証明できる機能があります。
データの信頼性を証明する仕組みとして電子署名やログ管理などがありますが、日時を証明する機能はタイムスタンプにしかない固有のものです。
電子署名は、データの作成者を証明しますが、データがいつ作成されたかを証明することはできません。
また、コンピューター上のログ管理では、あくまでコンピューターに記録されている時刻が参照されます。
そのため、厳密な時刻の証明にはなりません。
タイムスタンプの時刻は、協定世界時UTC(NICT)と1秒以内の誤差で収めることがルールとして定められています。
タイムスタンプの法的効力
タイムスタンプは、あらゆる電子文書において重要な要素です。
取引が起きた日時を正確に記録することで法的効力を発生させます。
この信頼性から、いくつかの法律でタイムスタンプが参照されています。
以下の法律が代表例です。
電子署名法
電子署名法は電子データの普及とデジタル取引の必要性の高まりを受け、デジタル化された契約の真正性を確認する有効な手段として認める法律として制定されました。
口頭での契約は裁判では強制力を持たないため、電子署名の付与を義務付けることで、電子版の契約書の真正性を確認することが重要です。
これは、文書が本当に当事者によって作成され、何ら変更されていないことを証明するものとなります。
さらに、電子契約の完全性を維持するために、電子署名と一緒にタイムスタンプを貼り付けて、契約の正確なタイミングを証明する必要があります。
電子帳簿保存法
1998年7月に「電子帳簿保存法」が施行されるまでは、国税関係書類はすべて物理的な形で管理する必要がありましたが、
現在では、同法が定める条件のもと、同じ書類を電子的に保管することが合法的に可能となっています。
一般的に、電子保存の場合、改ざんなどの不正行為を防止するためにタイムスタンプが必要です。
従来は、タイムスタンプはデータ取得後3営業日以内に受信者が署名する必要がありましたが
2022年度の法改正で、この規定が緩和されています。
タイムスタンプは2カ月以内、つまり7営業日程度で付与すれば問題なく、電子化の手続きには税務署の同意が不要になっています。
e-文書法
e-文書法は、業法や税法で紙媒体での保存が義務付けられている文書を、デジタル情報(電磁的記録)として保存することを認可する法律です。
経済産業省は、e-文書法の認可条件として「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つを設定しています。
このうち「完全性」についてはタイムスタンプで証明できます。
タイムスタンプを付与する代表的な書類
タイムスタンプの付与が求められる代表的な書類を分野や事業ごとに紹介します。
部門・事業 | タイムスタンプを付与する文書 |
---|---|
営業・法務 | 契約書 |
経理 | 電子帳簿保存関連書類 |
研究・開発 | 研究報告・設計図 |
医療 | 電子カルテ |
タイムスタンプを付与するためのステップ
タイムスタンプは以下のようなステップで付与されます。
1.要求
最初に、ハッシュ値に変換した文書を時刻認証局に送信します。
これは「要求」と呼ばれるステップです。
専用のシステムを使用するため、企業側がハッシュ値への変換を手作業で行う必要はありません。
2.発行
時刻認証局によってハッシュ値と時刻の統合が行われます。
この統合情報が「タイムスタンプ」です。
この統合は「発行」のステップに該当します。
その後、タイムスタンプが企業側に返送されます。
3.検証
「検証」は、データの改ざんが行われていないことを確認するステップです。
オリジナルのデータからハッシュ値を算出し、タイムスタンプのハッシュ値と比較して、発行以降に干渉が起きていないかどうかを把握します。
タイムスタンプを利用する2種類の方法
タイプスタンプを利用する方法は以下の2種類に分けられます。
時刻認証局との直接契約
時刻認証局と直接契約を締結することにより、企業はデジタル情報のタイムスタンプを取得することができます。
タイムスタンプ付与は時刻認証局が提供するアプリケーションまたはシステムによって行われます。
時刻認証局が提供するさまざまなサービスやアプリケーションのなかから、利用者の企業に最も適したプランを選ぶことができます。
タイムスタンプ対応システムの導入
会計ソフトや電子契約ソフト、文書保存ソフトの中には、タイムスタンプを利用する機能を備えたものがあります。
こうしたサービスを利用すれば、タイムスタンプを発行することができます。
このサービスは有料プランに含まれていることが多いほか、オプションでの提供も一般的です。
実務での一般的なタイムスタンプ付与までの行程
実務においてタイムスタンプは以下のような行程で発行されます。
1.書類作成
まず、タイムスタンプを付与する文書を作成します。
ファイルで作成した文書のほか、手書きの文書にタイムスタンプを付与することも可能です。
契約書など、二者間の取引によって作成された書類にもタイムスタンプを付与できます。
2.対応形式への変換
タイムスタンプを付与するためには、対応形式への変換が必要です。
一般的に、PDFや画像のフォーマット変換する必要があります。
手書きの文書にタイムスタンプを付与する場合はスキャンの作業を行います。
使用するシステムによっては、タイムスタンプを付与できるファイル形式が制限されているケースがあります。
あらかじめ、システムが対応しているファイル形式を調べておくことが大切です。
3.システムへのアップロード
使用しているシステム上にタイムスタンプを付与したいデータをアップロードします。
システムによっては、文書を作成した時点でタイムスタンプが自動的に付与されるものもあります。
取引先が多く契約を頻繁に行う場合は、文書の作成とタイムスタンプの付与を完結できるツールを使うのがおすすめです。
まとめ
タイムスタンプとは、契約書をオンラインで完結させるために不可欠な技術です。
企業のオンライン化が進む中、契約書へのサインを容易にするタイムスタンプへの必要性が高まってきています。
タイムスタンプを付与した契約が可能な、信頼性の高いサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
タイムスタンプとあわせて知っておいていただきたいのが、電池帳簿保存法の概要です。
スターティアでは、「電子帳簿保存法」に関するお役立ち資料をご提供しています。
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労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
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電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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