DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、
「IT技術の浸透で人々の暮らしをより豊かなものに変革する」という、
2004年にスウェーデンはウメオ大学のエリック・ストルターマン大学教授が提唱した言葉です。
日本では、2018年に経済産業省がDXに関するガイドラインを発表しました。
その中でDXを
「デジタル技術を活用して業務や組織のあり方を抜本的に変革し、競争力の優位性向上やビジネス環境の変化に対応すること」
と定義づけています。
このDXは、ありとあらゆる分野で取り入れられており、それは人事も例外ではありません。
今回は人事のDX(HRDX)について、取り組むメリットや事例も併せて解説します。
1. 人事とDX推進の関係とは?
人事とDX推進といえば、“人事という業務自体のDXを考える”という捉え方よりも、
“DXの推進のために人事をどのように戦略的に進めていけば良いのか?”という戦略人事的な考え方に焦点が当たることが少なくありません。
DX推進では、いかにしてDX推進のための組織を作り、それを運用していくかということが重要なポイントですから、人事としての役割は大きいといえます。
企業文化や社風、組織そのものなどは、元来HR領域が担う要素が多いことからもその重要性が伺えますね。
企業規模によっては、人事が旗振り役となってDXを進めることもあるでしょう。
HRDXとは、特に会社全体を強く巻き込んで行うDXであるということを念頭に置いておきましょう。
人事とDX推進では、機微なプライバシーに関わる個人情報を多く取り扱うことになるため、慎重論も多いといわれています。
しかし、企業文化や社風などを変革することがDXですから、それを形づくる「人」に関するHRDXを推進することができていない企業が、会社としてDXを実現させることは困難です。
どのようにDXを推進していく組織を作っていくか、適材適所の人員配置を行うか、従業員のモチベーションを高めていくか、
エンゲージメントの高い組織を作っていくか…こうしたコアな部分に、本来人事は時間を割くべきです。
まずは給与計算・労務管理などのルーティン業務の自動化または半自動化を進められれば、
戦略人事などコア業務に時間を割くことができるようになり、会社全体のDX推進につながることが期待できます。
2.人事部門の課題
2-1 データが紙やエクセルで管理されている
従業員の履歴書、適性検査の結果、勤怠管理情報(タイムカードなど)、福利厚生のための家族情報など、
従業員の様々な情報を紙で管理している企業は、いまだ多く存在しています。
エクセルに入力している企業でも、時期や部署によってフォーマットが異なっているなど、
うまく活用できていないケースも多々あります。
そもそも給与計算や労務管理といった業務自体がベテラン社員の勘と経験を頼りに進められていて、
使用している紙やエクセルを他の人が見ても、仕事を引き継ぐことができないという事態になってしまっていることもあります。
もし事業規模を拡大したいと思ってもアナログなやり方では管理が追い付かず、事業拡大のチャンスを失うことにもなりかねません。
2-2 データが統一されていない
紙で保管されている情報であっても、一人ずつにまとまっていればまだ良いのですが、バラバラに存在しているケースもあります。
これでは、一人の従業員について何か調べるとなっても無駄な時間が発生してしまいます。
異動や昇進の記録は人事部に残っていても、細かいプロジェクトでの活躍や、
毎月の面談内容などの情報はどこにあるかわからない…といったことも起こります。
また場所だけでなく、中身の統一も問題です。例えば、
・面談のシートはマネージャーのオリジナルで作成されており、マネージャーだけのパソコンにしか入っていない。
・保存場所すらわからない人もいる。
・上司が変わったら、人事評価がガラリと変わってしまった…
なんてことにもなりかねません。
2-3 古いシステムを使い続けている
何十年も前に導入した古いシステムがネックになっているパターンです。
とりあえず引き継がれるままに古いシステムを使って勤怠管理や労務管理をしてきているけれども、
導入当初の担当者はおらず、仕様書の場所も不明。
改善しようにも方法がわからず、そのまま何とかここまできている状態です。
すでに業務の複雑化や無駄を感じているでしょうし、そのうちOSなどの動作環境がサポート対象外となり、大きなリスクを抱えることになってしまいます。
これは「2025年の崖」と呼ばれる問題の一つです。
2025年の崖は、古いシステム(レガシーシステム)により発生するブラックボックス化などにより、
日本経済全体で12兆円もの経済損失が発生するという可能性について警鐘を鳴らしたものであり、
古いシステムはすぐにでも新しいシステムに置き換えられるべきだされています。
2-4 定型業務に時間をとられ、創造的な業務に時間が取れない
紙や古いシステムに振り回され、非効率な方法で定型業務を行なっている企業は非常に多いです。
結局は人の力に頼るしかなく、時間をかけて必要な業務をこなすだけになってしまっています。
給与計算業務は重要かつミスが許されない業務であることは確かですが、それ以上の価値を生み出すことはありません。
しかしながらベテラン社員がこうした業務を担っているケースは少なくなく、
本来はより想像的な業務を行なって付加価値を生み出していってもらうべきにもかかわらず、
定型業務に時間を割かれてしまっている状況が散見されます。
3. 給与計算・労務管理・評価など人事部門をDX化するメリット
3-1 業務半自動化(自動化)により業務効率化が実現できる
人事部の業務の中には、実は半自動化(自動化)できるものが多数あります。
というのも、同じ内容を正確に繰り返す、一気に処理するといった作業は、むしろ人間よりもITツールが得意とする作業なのです。
今は様々なツールが販売されていますので、給与計算、労務管理、人事に関する申請の処理といったものを全て自動化すれば、一気に業務効率化が実現できます。
またヒューマンエラーのリスクも削減することもできるので、エラーへの対処という意味でも業務効率化が進むでしょう。
人事データの集約が進めば、人事評価も半自動化することが可能になってきます。
データで確認すべき内容はボタンひとつで把握できることにより、よりきめ細やかなや部分にまで注目をして評価をすることができるようになります。
3-2 少人数でも高いパフォーマンスが実現できる
元々人事部は少数で組織されていることが多いため、定型業務だけを行う部署になってしまっていることも少なくありません。
しかし事務的な業務を自動化することで、最適な人員配置、最適な教育プランの実施、公平で納得感のある人事評価など、
本来行うべき業務に力を注ぐことができるので、少人数でも高いパフォーマンスが実現できるようになるのです。
3-3 コスト削減ができる(人件費、スペース、時間…)
ベテラン社員の給与と事務作業は、正直割に合わないに合わないと感じている中小企業の経営者の方もいると思います。
人事業務のDXが進めば事務作業の多くが自動化されるので、給与と本来の力に見合った働きをしてもらうことができるでしょう。
デジタル化によるコスト削減は、事務作業の自動化だけではありません。
紙データを全てデジタル化できれば、保管スペースが不要になり、保管スペース分の家賃が実質浮くことになります。
またデジタルデータであれば、欲しいデータを即座に取り出すことができるので、時間的なコストも大きく削減できることになります。
3-4 リモートワークでも労務管理ができる
Withコロナ・Afterコロナの時代のスタンダードになりつつあるリモートワークでは、タイムカードのような勤怠管理は機能しません。
いつでもどこでも業務をした記録を残すことができ、それを管理者が把握できる環境が、システムの導入によって整えられます。
3-5 公平性のある人事評価で社員のモチベーションが高まり、組織活性化につながる
属人的な人事評価は、大きな不満につながりやすいため、組織運営の課題となっています。
しかし、全ての社員に対して、同じデータを記録し、それ対しての人事評価が行われるようになれば、社員のモチベーションが高まります。
マネジメント側にとっても、部下一人一人のデータを自分で集計し分析する作業は負担が大きいですが、
集計・分析までが自動化できていれば、1対1で面談する時間に集中することができます。
結果的に部下の成長やエンゲージメントを高めることができ、組織活性化につながるのです。
3-6 人材マネジメントがしやすくなる
データの集約・蓄積が進めば、容易に様々な分析が可能なります。例えば、ハイパフォーマー分析はそのひとつです。
人事評価やマネジメントにデータ分析を取り入れることができれば、
部下とのコミュニケーションが取りやすくなる、適切な教育プランを立てられるなど、会社全体の生産性も向上します。
近年問題となることが多い早期離職者の傾向を分析することで早めのフォローができれば、
優秀な人材の流出を防ぐこともできるようになります。
4. 人事部門のDXの事例
4-1 給与計算自動化システムの導入で業務効率化を実現
手軽かつ一気に業務効率化ができる方法として取り入れられやすいのは、給与計算自動化システムの導入です。
給与計算は従業員一人一人の給与がかかっていますから、遅れやミスは許されません。
特にシフト勤務の人が多かったり、雇用形態が多数あったり、アルバイト雇用などでとにかく人数が多い企業にとっては大きな負担となっています。
給与計算自動化システムの導入によって業務効率は格段に上がり、ミスもほとんど発生しなくなります。
従業員が多い企業は特に、すぐにでも取り入れたいシステムです。
4-2 勤怠管理システムの導入でリモートワークもスムーズに
Withコロナ・Afterコロナの時代には、オフィスで働くことは当たり前ではありません。
オフィスに出勤しなくても勤怠管理ができるシステムを導入すれば、リモートワークをスムーズに行うことができ、人事部としても管理が楽になります。
PC、スマホ、タブレットなどからアクセス可能なクラウド型の勤怠管理システムであれば、いつでもどこでも出退勤記録が残せます。
そして、それがそのまま集計されて給与計算ソフトに出力できるものを導入すれば、
その後のデータ集計・入力作業コストまで削減することができるのです。
リモートワークに関していえば、リモートワークを前提とした人事評価システムを導入する企業の事例も増えています。
人事評価の内容を決めるのには労力がかかりますが、
それをシステム化してしまうことができれば、長い目で見て業務効率化に繋がります。
4-3 従業員の情報をデータ化して、公正な評価と適材適所の人員配置
紙だったり、バラバラになっていたりしていた従業員の情報を全てデータ化し、蓄積していくことで、
クリックひとつでその人の情報を見ることができるようになります。
同じ項目のデータで管理されていることで、公平な評価も可能となり、データを元に広く比較検討した上で人員配置ができます。
全てをデータだけに頼るのは時期尚早といえるかもしれませんが、
客観的なデータを評価軸に取り入れることはミスマッチを防ぐことに役立つでしょう。
DXによりデータを根拠とした適正な評価や人員配置が進めば、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める効果も期待できます。
4-4 エンゲージメントサーベイシステムの導入で従業員のモチベーションアップ
エンゲージメントサーベイシステムを導入する企業が増えています。
人事でいうところのエンゲージメントとは、従業員の企業への愛着心や仕事への熱意をさします。
エンゲージメントが高い組織では、従業員は会社や組織を信頼し、貢献したいという気持ちで働き、それが従業員同士の心の繋がりにもなっています。
このエンゲージメントが量れるようになったのが、エンゲージメントサーベイシステムです。
従業員のエンゲージメントを正しく把握し、それに対して1on1面談などを実施することができれば、
退職による人材流失の抑制や社員のパフォーマンス改善などが期待できます。
終身雇用や年功序列の昇進を約束されていた時代と同じ方法では組織を活性化させることは難しいですから、こうした取り組みが必要でしょう。
4-5 人材育成、教育システムのデジタル化(オンライン化)
新型コロナの影響により、人材育成、教育もデジタル化が進んでいます。
対面からオンラインに変わるにあたって、ただ同じ内容をスライドさせても同じ効果は得られません。
やはりオンラインやウェブで学習することを前提としたシステムを導入することが望まれます。
こうした状況で、多くの企業がeラーニングを使ったオンライン学習やライブ配信機能を搭載したLMSを活用して社内研修を進めています。
eラーニングであれば時間も場所も選ばず、効率的に勉強を進めることができますし、
LMSでは出欠確認、理解度テスト実施、講師や他受講者とのコミュニケーションという、対面で実施していたことがそのまま実施できるようになっています。
✓eラーニングとは、情報技術を用いて行う学習のことです。
ビデオ配信やネットを通じた学習コンテンツの配信などがよく用いられています。✓LMSとは、eラーニングに必要な学習教材の配信や成績などを管理するシステムのことです。
リモートで実施できるメリットはもちろん、情報変化の激しい時代において、
短時間で頻度高く新しい情報をインプット・アウトプットしていく必要性があることを考えると、
新型コロナの状況が改善したとしても、対面と併用しながら活用できるシステムであるといえるでしょう。
5.まとめ
人事のDX(HRDX)は、基本的に全ての社員になんらかの影響を与えることになります。
個人情報の取り扱い方法を変更するのですから、セキュリティ面に気を配るのはもちろんのこと、
何をどんな目的で行っているのかをきちんと示すようにしましょう。
人事の業務は、実は自動化しやすいものが多いので、できるところからデジタル化を進めることで会社のDXの良い見本となることができるでしょう。
便利な教育システムによりスキルが身に付いたり、適正な評価が行われるようになったり、
リモートワークでの労務管理が手軽に正確に行えるようになったことを実感すれば、
自分の部署でのDXにも前向きに取り組んでもらえるのではないでしょうか。
そして何より、業務効率化によって生まれた時間を使って、本来人事が行うべきコア業務に注力できるようになれば、
企業の競争優位性を獲得することにつながるはずです。
できることから、スタートしましょう!
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古物商 東京都公安委員会許可(事務機器商):第304361804342号
労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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