毎年、バックオフィス担当者にとって大きな負担となるイベントのひとつが年末調整です。
年末調整では、多くの書類を従業員から回収する必要があります。
また、事務側で作成し、提出しなければならない書類も少なくありません。
差し戻しなどの不備を防ぐためには、あらかじめ年末調整で処理することになる書類をリストアップしておくことが大切です。
この記事では、年末調整に関連した書類を従業員から回収する書類、事務側で用意する書類にわけて解説します。
年末調整業務を大幅に効率化するツールについて紹介しますので、年末調整担当者の方はぜひ参考にしてください。
従業員に記載・提出してもらう書類
年末調整では、従業員にいくつかの書類を記載し、提出してもらう必要があります。
以下では、従業員に提出を求める書類についてそれぞれ解説します。
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、従業員が所得税の扶養控除を受けるために必要な書類です。
扶養控除とは、従業員に扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことで、扶養している家族がいる納税者の負担を軽減するために用意されている控除の制度です。
扶養親族には、従業員と生計を同一としている6親等以内の血族、3親等以内の姻族が含まれます。
申告書には、当該従業員が不要している親族についての情報を記入します。
従業員には、必要に応じて以下の欄の記入を求めます。
- 個人番号欄
- 老人扶養親族欄
- 所得の見積額欄
- 非居住者である親族欄
- 生計を一にする事実欄
- 左記の内容欄の記載事項(障害者又は勤労学生に変更)
- 住民税に関する事項欄
誤解されることもありますが、扶養控除対象かどうかを確認するため、扶養家族の有無にかかわらず提出が必要です。
当年分と翌年分の2枚を配布・回収し、変更があった場合に控除額の調整を行います。
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書
「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書」は、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書を1枚にまとめた書類です。
この書類1枚で3種類の申告ができます。
以下では、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書について解説します。
基礎控除申告書
基礎控除申告書は、従業員の所得金額から基礎控除の額を計算して申告するための書類です。
以前は、基礎控除が一律で38万円として定められていましたが、2020年からは48万円を上限に所得金額から計算するように法律が変更されています。
従業員の合計所得に応じた控除額は以下のとおりです。
従業員の納税所得金額 | 基礎控除の額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
配偶者控除等申告書
配偶者控除等申告書は、配偶者控除、もしくは配偶者特別控除のために必要な書類です。
いずれも、配偶者がいる従業員の納税額を軽減するための所得控除の制度です。
従業員本人の合計所得が1,000万円以下で配偶者の合計所得が48万円以下であれば「配偶者控除」が受けられます。
配偶者の所得が48万円超133万円以下の場合は「配偶者特別控除」となります。
配偶者の所得が133万円を超えると、配偶者特別控除は受けられません。
書類には、配偶者の氏名や個人番号、所得などの情報を記入します。
所得⾦額調整控除申告書
所得金額調整控除申告書は、令和2年分から新設された「所得金額調整控除」を受けるための書類です。
年間の給与が850万円を超え、さらに以下のいずれかの条件に当てはまる従業員は所得金額調整控除を受けられます。
- 本人が特別障害者
- 23歳未満の親族を扶養している
- 特別障害者の配偶者、もしくは扶養親族と生計を同一としている
控除額の上限は15万円です。
書類には、該当する要件や配偶者、扶養親族の情報などを記載します。
保険料控除申告書
保険料控除申告書は、その年に従業員が支払った各種保険料を申請し、所得控除の額を算出するための書類です。
以下、4種の保険料の申請欄があります。
- 生命保険料控除欄
- 地震保険料控除欄
- 社会保険料控除欄
- ⼩規模企業共済等掛⾦控除欄
書類には、それぞれ保険会社や保険料の額を記載します。
また、各保険の控除証明書の添付も必要なため、忘れず従業員に提出を求めてください。
住宅借⼊⾦等特別控除申告書
住宅借⼊⾦等特別控除申告書は、住宅ローンを利用して住宅の新築・増改築を行った従業員に提出を求める書類です。
ローンを組んだ初年度は確定申告で処理する必要がありますが、2年目以降は年末調整で申請可能です。
要件に該当する従業員は、「住宅借⼊⾦等特別控除」、もしくは「特定増改築等住宅借⼊⾦等特別控除」を受けられます。
住宅借⼊⾦等特別控除申告書は税務署から従業員のもとに送られてくる書類です。
従業員には書類を控えておくように案内しておき、年末調整のタイミングで提出するように指示してください。
申請の際は、本書類のほか融資額残⾼証明書、住宅取得資⾦に係る借⼊⾦の年末残⾼等証明書の添付が必要になります。
源泉徴収票
その年度に中途入社してきた社員がいる場合は、前の職場で発行された源泉徴収票の提出を求めてください。
前の職場の所得税の天引き分と調整するために必要です。
源泉徴収票の発行タイミングは職場によって異なるため、中途入社してきた従業員には前の職場と連絡をとり、早めに源泉徴収票を用意するように指示しておく必要があります。
総務・労務・経理の担当者が作成する書類
以下では、総務・労務・経理など、年末調整を処理する担当者側が作成する書類について解説します。
支払調書
支払調書は、企業が外部に支払いをした場合に作成する書類のことです。
報酬、料金、契約金、賞金、不動産の使用料、不動産譲り受けの対価、不動産売買の貸付・あっせんの手数料などを支払った場合に発行します。
提出先は税務署です。
確定申告がしやすくなるため、支払先から提出を求められることもあります。
書類内では、誰に対して、どのような報酬を支払ったのか明記しなければなりません。
以下は、支払調書に記載する具体的な項目です。
- 支払を受ける者
- 区分
- 細目
- 支払い金額
- 源泉徴収税額
- 摘要
- 支払者
支払調書は翌年の1月31日までに税務署まで提出しなければならないため、年間の支払いがすべて終わったタイミングで忘れずに作成しておく必要があります。
源泉徴収票
源泉徴収票は、年末調整後の年間所得額、控除額、源泉徴収税額を記載する書類です。
従業員に提出するものと、税務署に提出するものの2種類を用意する発行する必要があります。
税務署への提出期限は翌年の1月31日です。
なお、退職者に対しては通常とは体裁が異なる退職者用の源泉徴収票を用意し、退職者に郵送しなければなりません。
法定調書合計表
法定調書合計表は、法定調書の支払額、源泉徴収税額、総数の合計を記載する書類です。
法定調書には、支払調書と源泉徴収票が該当します。
各法定調書とセットで、税務署に提出します。
給与支払報告書
給与支払報告書は、従業員への給与支払額を市区町村に報告するための書類です。
従業員が居住している市区町村に提出します。
給与支払報告書には、個人別明細書と総括表の2種があります。
個人別明細書は、従業員の人数分発行する書類です。
以下のような内容を記載します。
- 給与を受ける者の氏名
- 住所
- 生年月日
- 給与の金額
- 保険料控除の金額
総括表は、従業員が居住している市区町村ごとに情報をまとめた書類です。
個人別明細書の表紙・目次のような役割を果たします。
総括表には、以下のような内容を記載します。
- 給与の支払者の名称
- 給与の受給者の人数
- 個人別明細書を作成した従業員の人数
個人別明細書は、従業員に発行する源泉徴収票と内容がほとんど同じです。
そのため、源泉徴収票と同時に作成できます。
年末調整の書類をツールで管理するメリット
年末調整は、上記のような書類のやりとりを伴う煩雑な作業です。
しかし、現在はシステム、ツールを利用して簡単に処理できます。
労務管理のツールや給与管理のツールと連携させれば、個人番号や住所、扶養している親族などの書類記入情報を自動的に取り込めます。
手作業が大幅に少なくなるため手間がかからなくなるほか、ミスも軽減可能です。
情報提出や申請をシステムで処理するため、不備があった際の差し戻しがスムーズに成るという点もメリットのひとつ。
従業員ごとの提出状況も簡単に確認でき、未提出者に督促の通知を出すことも可能です。
書類保管コストがかからなくなるほか、紙の紛失、破損といったトラブルを防止できるメリットもあります。
管理者だけでなく従業員側にとっても多くのメリットがあります。
書類での申請の場合、記入箇所がわからず不備につながってしまうケースは少なくありませんが、ツールを使用することでガイド機能がついているため迷わずに情報を入力できます。
また、前年と同じ情報などは自動的に転記されるように設定することも可能です。
回収がスムーズになり、不備も減るため、結果的に事務を担当する側のメリットにもなります。
まとめ
年末調整では多くの書類を処理する必要があります。
書類の回収・提出を忘れていたり、記入内容の不備を放置したりすると、差し戻しなどのトラブルにつながります。
余計な手間を省くためにも、回収・提出する書類、および各書類の内容について確認しておくことをおすすめします。
従業員の数が多く、年末調整の作業が大きな負担を担っている場合は、年末調整のシステムやツールを利用するのがおすすめです。
スターティアでは、年末調整業務の効率化に役立つ「奉行クラウド Edge」の導入をサポートしています。
ご興味をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
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小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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