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2022-09-30 09:41:44

2022年4月施行の改正特許法の内容や関連企業を解説

2022年4月施行の改正特許法の内容や関連企業を解説

2021年5月に成立した改正特許法が2022年4月1日より施行となっています。

頻繁に改正されることで知られている特許法ですが、今回の改正はどのような内容であり、どんな企業が影響を受けるのでしょうか。

この記事では、改正特許法の内容や関連企業について解説します。

 

2022年施行の特許法等改正内容

特許法は、特許権取得の条件や特許の取得方法などがまとめられています。

2021年5月14日に、「特許法等の一部を改正する法律」が国会において成立しました。

2022年4月より、本改正内容が施行となっています。

今回の改正によってどのような点が変更になっているのでしょうか?

まずは、改正内容の全体像をおさらいしていきましょう。

 

  1. 新型コロナウイルス拡大に関連した手続きの見直し
  2.  
    ・審判の口頭審理などでウェブ会議システムによる手続きを認証

    ・特許料の支払方法の拡充、印紙予納の廃止

    ・意匠・商標の国際出願における電子送付の採用

    ・感染症や災害を理由として特許料の納付期間経過に関する割増特許料の免除規定

     

  3. 権利保護の見直し
  4.  
    ・海外事業者による模倣品の国内持ち込みを商標権等の侵害と位置づけ

    ・特許権の訂正に関する通常実施権者の承諾不要化

    ・手続期間の経過により特許権等が消滅した場合の回復要件の緩和

     

  5. 知的財産制度の基盤強化
  6.  
    ・特許権の侵害に関して訴訟に発展した場合に第三者から意見を募る制度の導入

    ・特許料等の見直し

    ・弁理士制度の見直し

    このように、多くの内容に変更が加えられています。

    しかし、すべての変更内容を確認し、把握しておくのは困難です。

    一般的な事業者が知っておくべき、特に影響が大きい部分について下記で解説します。

 

特許法改正の背景

今回の特許法改正は、どのような背景で実施されたのでしょうか?

経済産業省は今回の特許法改正の背景にある目的として、以下の3点を挙げています。

 

  1. 新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続きの整備
  2. デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し
  3. 知的財産制度の基盤の強化

 

(引用:「特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

特に近年の状況を色濃く反映していると言えるのが、新型コロナウイルスの影響による改正内容です。

世界中で人が対面することのリスクが警戒されるようになり、各業界の手続きにおいても換算拡大を抑制するための措置が求められるようになっています。

特許法においても例外なく、人が対面する機会を減らすために、ウェブ会議システムの利用者、出願などにおける電子送付方式を認可する変化が加えられました。

また、特許料納付の遅れについても猶予措置が設けられています。

新型コロナウイルス感染拡大や大型災害を理由とする特許料納付の遅れについては、割増料金が適用されないことになりました。

1990年代以降は特許法の改正が1~3年程度の短いスパンで行われています。

これは、社会や企業活動がめまぐるしく変化しており、特許法もこの変化に適応する必要があるためです。

今回の改正も、新型コロナウイルスという世界的に大きなインパクトに合わせた改正と言えるでしょう。

また、企業活動にデジタルが活用されるようになったことも、今回の改正の大きな理由です。

特許法においては、デジタル化の影響からライセンスの形態が複雑化したことが懸念されています。

このことから、特許権の訂正・廃止に関して、手続きをシンプルにするための条件緩和が加えられました。

特に影響が大きい改正内容

上記のとおり、今回の特許法改正は細かな改正点が多く、全容を把握するのは困難です。

以下では、特に事業者への影響が大きいと考えられている改正内容をピックアップしてご紹介します。

海外事業者による模倣品の国内持ち込みの違法化

近年は、日本の消費者が直接海外の事業者から商品を輸入するケースが増えていますが、正規の輸入業者が商品管理を実施しているわけではないため、模倣品が輸入されることも少なくありません。

一方で、このような個人使用目的の模倣品の輸入は、特許権侵害の要件である”業として”を満たさないことから、意匠権や商標権の侵害には該当しません。

また、模倣品を提供しているのが海外事業者であることから、日本の知的財産権侵害として立証することが困難です。

さらに、”業として”輸入しているのにも関わらず個人使用目的を装って模倣品を輸入している悪質な業者も少なくありません。

こうした問題から、模倣品が国内に入ってくることを防止するのが難しい状況が続いていました。

しかし、今回の改正によって、模倣品の郵送などによる国内持ち込みは意匠権・商標権の侵害として取り扱われるようになります。

具体的には、「輸入」の定義に変更が加えられました。

模倣品が税関に到着した時点で、「海外事業者からの輸入」と捉えられることになるため、個人使用目的という訴えがあったとしても、商標権・意匠権の侵害と認定されるようになる見込みです。

模倣品によって被害を受けている事業者にとっては、差し止めや損害賠償を請求しやすくなると考えられています。

特許権成立後の訂正審判などにおける通常実施権者の承諾不要化

成立後の特許権が「無効である」という主張を受けることは少なくありません。

過去に似たような発明があること、簡単に思いつくような発明であることなどが、無効主張の代表的な理由です。

無効主張を受けた場合、特許権者は特許の訂正を行うことで無効理由を除去し、主張を退けることができます。

特許紛争においては一般的な手続きです。

改正前の特許法では、訂正の際に通常実施権者(ライセンシー)全員の承諾が求められていました。

しかし、特許権によっては1つで数百のライセンシーが存在しているケースも少なくありません。

こうした背景には、テクノロジーの発展による異業種間のライセンス契約の増加があります。

このような場合は、ライセンシーに承諾を得る負担から、訂正が困難になってしまいます。

また、契約締結後の関係性変化により、そもそもライセンシーと連絡をとることが難しくなるケースが目立っていました。

今回の改正により、訂正の際に通常実施権者の承諾は不要になりました。

これにより、ライセンス契約と締結している特許権でも訂正しやすくなります。

ただし、専用実施権者と質権者の承諾は引き続き求められます。

手続期間が過ぎたことによる特許権消滅の回復要件緩和

特許権は必要な手続きを所定の期間内に行わなければ消滅します。

消滅した特許権の回復は、手続きを期間内にできなかったことに「正当な理由」がある場合にのみ認められていました。

しかし、改正前は「正当な理由」に求められる要件が、諸外国と比較して厳しすぎるという意見がありました。

結果として、特許権の回復率が主要国と比較して著しく低い点が指摘されています。

今回の改正によって、「正当な理由」の要件が緩和されることになります。

「期間内の手続きを故意で行わなかった」と見なされる場合を除き、権利の回復が認められることになります。

特許権を消滅させないためには、まず期間内に手続きを行うことが前提です。

一方、意図せず期間を過ぎて特許権が消滅してしまった場合も、手続きを行うことで回復が認められる場合があります。

期限の徒過によって特許権が消滅した場合は、あきらめず回復の手続きを行うことが肝心です。

特許料の見直し

今回の改正によって特許料などが引き上げられることになりました。

改定されるのは以下の料金です。

 

  • 特許料
  • 商標登録料
  • 国際出願(特許、実用新案)関係手数料
  • 国際登録出願(商標)関係手数料
  • 電子化手数料

例として、特許料は以下のように改定されます。

項目 改定前 改定後
第1年から第3年まで 第1年から第3年まで 2,100円+請求数×200円 4,300円+請求数×300円
第4年から第6年まで 6,400円+請求数×500円 10,300円+請求数×800円
第7年から第9年まで 19,300円+請求数×1,500円 24,800円+請求数×1,900円
第10年から第25年まで 55,400円+請求数×4,300円 59,400円+請求数×4,600円

特許庁は、今回の改定の理由として海外の特許文献が増加したことによる審査負担の増大や、効率化のためのシステム刷新などを理由として挙げています。

2022年4月1日より本改訂料金が適用されているため、現在は改定後の料金を納付しなければなりません。

どんな企業が特許法改正の影響を受ける?

今回の改正によってどのような企業が影響を受けるのでしょうか。

まず、特許・意匠・商標等の知的財産権の出願を行っている企業はもれなく影響を受けることになります。

特許料の改定による影響が代表例です。

また、新型コロナウイルスのパンデミックの影響によって、特許料の納付や特許権継続の手続を期間内に終えられなくなることは、どの企業にも起こりうる事態です。

そのため、多くの企業が割増料金免除や回復要件緩和といった改定による恩恵を受けると考えられます。

また、海外からの模倣品持ち込みが権利侵害として取り扱われることになった点は、これまで模倣品の流入によって大きな被害を受けていた企業にとって朗報です。

これまで大きな問題となっていた、個人の輸入を装った事実上の業者の輸入による模倣品流入は、今回の法改正によって大きく改善されると予想されています。

特許ライセンス契約を他社と締結し、ロイヤリティ収入を得ている企業にとっては、特許権の訂正手続にライセンシーの承認が必要なくなったことが大きな変化と言えます。

特許権の取得後、競合から無効取得を受けることは十分に考えられます。

特許権の規模縮小など訂正がしやすくなったため、これまで以上に特許権の無効主張を退けやすくなっています。

まとめ

特許法の改正内容について解説しました。

4月1日の施行からまだ日が浅く、各企業の対応については情報が出揃っていません。

企業への定着をサポートするため、今後はオフィシャルなガイドラインなどが提供される可能性があります。

関連企業は、今後も特許法の情報をフォローしていくよう心がけましょう。

参考:経済産業省 特許庁

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