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お役立ち記事

2022-10-03 11:56:47

育児・介護休業法の改正内容と事業者がとるべき対応

育児・介護休業法の改正内容と事業者がとるべき対応

2021年に交付された改正育児・介護休業法の内容が2022年4月1日から順次施行されています。

この改正内容に対する対応はお済みでしょうか?

現状、出産・育児を控えている従業員がいるかどうかに関わらず、事業者側は改正内容について知っておく必要があります。

こちらでは、育児・介護休業法の改正内容と事業者がとるべき対応についてお話しします。

 

育児・介護休業法の基本情報

育児・介護休業法とは、家族の育児・介護をしている労働者を支援するための法律です。

正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。

1991年に制定された「育児休業法(育児休業等に関する法律)」がベースとなっています。

1995年には介護休業制度が盛り込まれ、現在の名称に改称されました。

その後も複数回の改正が加えられています。

子育てや家族の介護をする労働者に対して、仕事と育児・介護の両立をサポートするのが本法律の目的です。

具体的には以下のような制度が盛り込まれています。

育児休業制度

育児休業とは、小さな子どもがいる労働者が休業を取得できる制度です。

子どもが1歳になるまで利用できます。

保育園に入所できないなど何らかの特別な事情がある場合は、最長2年まで期限を延長可能です。

男性労働者の場合、出産予定日または出生日以降に取得できます。

女性労働者の場合は、産後休業が終了した翌日以降から育児休業が適用されます。

介護休業制度

介護休業制度は、要介護状態の家族がいる労働者が取得できる休業制度です。

配偶者、父母、子ども、義父母、祖父母、兄弟姉妹の要介護者がいる場合に取得できます。

子の看護休暇制度

子の看護休暇制度は、労働者が子どもの看護のために利用できる休暇の制度です。

病気の看病だけではなく、予防接種や健康診断の付き添いにも利用できます。

労働者1人あたり、5日間の休暇が付与されます。

2人以上の子どもがいる場合は10日間の休暇を取得可能です。

介護休暇制度

介護休暇制度は、要介護状態の家族がいる労働者が取得できる休暇の制度です。

介護休業制度と同じように、配偶者、父母、子ども、義父母、祖父母、兄弟姉妹の要介護者がいる労働者を対象としています。

労働者1人あたり5日間の休暇を取得可能です。

要介護者の対象家族が2人以上いる場合は、10日間まで取得できます。

改正育児介護休業法・改正雇用保険法の背景

2022年4月1日より、改正育児介護休業法・改正雇用保険法が施行となります。

今回の改正の背景にあるのは、男性の育児休暇が利用されていない状況です。

日本が直面している課題のひとつとして、少子高齢化による人口減少が挙げられます。

この状況を打破するためには、仕事を続けながら育児もできる環境が必要です。

しかし、実際には出産や育児によって離職するケースが目立っています。

育児介護休業法は、育児休業の制度を整備することでこの問題を解決することを目的としています。

しかし、多くの企業では男女間で無視できない育児休暇取得率の差が生じていました。

男性の育児休暇の必要性が見直され始めてから徐々に改善されてきていますが、2020年度には12.65%にとどまっています。

(参照:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」

今回の改正は、男性の育児休暇取得を促進し、こうした状況を改善することが主な目的です。

男性が育児休暇を柔軟に取得できる制度を整えれば、仕事と家庭の両立がしやすくなり、少子高齢化や労働人口の減少に歯止めがかかると考えられています。

また、多くの女性が出産・育児で離職している状況も改善される見込みです。

さらに、多くの家庭が希望の数の子どもを持てる社会の実現にも寄与すると見られています。

育児・介護休業法の改正内容

今回の育児・介護休業法の改正内容を具体的にご紹介します。

「男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設」

男性が育児休業を取得しやすくなる新制度が、現行制度に加えて新設されます。

追加されるのは以下の4点の枠組みです。

 

対象期間・取得可能期間

改正前の育児・介護休業法では、子どもが1歳になるまで(最長で2歳になるまで)の期間に、1回の育児休業を取得可能です。

改正後は、さらに出生8週間以内に4週間までの日数の休暇を取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されます。

 

申出期限

改正後に追加される「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、2週間前までに申し出れば取得可能です。

ただし、あらかじめ定められた労使協定で1カ月前までの申出期限が定められている場合はそちらが優先されます。

 

分割取得

「産後パパ育休(出生時育児休)」は、2回まで分割で取得可能です。

例として、対象期間のうち1、2週目を1回目、5、6週目を2回目といった取得ができます。

ただし、取得するスケジュールについては最初に申告しなければならず、後から変更はできません。

 

休業中の就業

「産後パパ育休(出生時育児休)」の期間中は、就業することも可能です。

ただし、労使協定の締結と労働者本人が合意していることが条件となります。

「育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け」

育児休暇が制度化されていたとしても、職場によっては労働者から申し出づらいケースがあります。

改正育児介護休業法では、育児休暇を取得しやすい環境整備を促進する内容が追加されました。

改正法施行後、労働者が育児休暇を取得しやすい環境を整備することが、事業者に対して義務付けられます。

具体的には、研修の実施、相談窓口の設置など定められている取り組みのいずれかを導入する必要があります。

また、改正前にはあくまで努力義務でしかなかった育児休暇に関する周知が、改正後は義務化されます。

改正後は、労働者が本人、また配偶者の妊娠・出産を申し出た場合、事業者は育児休暇制度について周知し、取得の意向を確認しなければなりません。

「育児休業の分割取得」

改正で新設される「産後パパ育休(出生時育児休業)」に加えて、以前から実施されている育児休業制度も今回の改正によって分割取得できるようになります。

改正後は、2回まで分割して育児休業を取得可能です。

また、育児休業の開始日についても柔軟に設定可能になります。

子どもが1歳を迎えてから育児休業を取得する場合の開始日の条件として設定されていた「1歳、または1歳半を迎えた時点」という内容は撤廃されました。

「育児休業の取得の状況の公表の義務付け」

育児休業取得状況の公表義務についても変更が加えられます。

改正前は、厚生労働省の認可を受けた「プラチナくるみん企業」のみに育児休業取得状況の公表が義務付けられていました。

改正以降、従業1,000人以上の事業者は、年1回、自社の育児休暇の取得状況について公表しなければなりません。

「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」

今回の改正によって、育児休業・介護休業を取得できる従業員の範囲が拡大されます。

改正前は、有期雇用労働者が育児休業を取得する場合に以下の要件がありました。

 

  • 引き続き雇用された期間が1年以上であること
  • 1歳6カ月までの間に契約が終了することが明らかでないこと

改正後は、引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者も、無期雇用労働者と同じように育児休業を取得できるようになります。

ただし、労使協定によって有期・無期を問わずに継続雇用期間が1年満たなければ育児休業を取得できないことが定められている場合は、その内容が優先されます。

各改正内容の施行タイミング

今回の改正育児・介護休業法の内容は2022年4月1日より順次施行されています。

具体的な施行スケジュールは以下のとおりです。

 

  • 2022年4月1日~
  •    ・育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け

       ・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

  • 2022年10月1日~
  •    ・男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設

       ・育児休業の分割取得

  • 2022年10月1日~
  •    ・育児休業の取得の状況の公表の義務付け

改正に関する事業者の具体的な対応は?

今回の改正に関して、事業者はどのように対応すべきなのでしょうか?

2022年4月1日からすでに段階的な施行は始まっています。

現段階で育児休暇に関して対象職員に周知する体制と、有期雇用職員の育児休暇取得希望を受け入れる体制が整っていなくてはなりません。

企業には基本的に全職員を対象とした研修を実施することが推奨されています。

少なくとも管理職に対する研修が求められます。

相談窓口の設置も求められる対応のひとつです。

社員に対する情報周知の方法も決めておく必要があります。

また、10月1日の産後パパ育休の開始・育休休業の改正に向けて、就業規則の変更が求められます。

本制度についても社員への情報共有を行っておきましょう。

また、育休によって業務が滞ることがないように、業務の引き継ぎ方法などについても事前に定めておくとスムーズです。

特に業務が属人化している場合は当該社員が育休に入ると業務が著しく停滞してしまうため、ノウハウなどを共有しておくことが求められます。

2023年4月には、従業員1,000人超の企業に対して、育児休業取得状況の情報公表が求められるようになります。

対象企業は、自社の育児休業取得状況をまとめておきましょう。

まとめ

育児・介護休業法の改正内容について解説しました。

今回によって、特に男性の従業員にとっては育児休暇を取得しやすくなるでしょう。

対象の従業員から育児休暇の取得希望があった場合、事業者は適切に対応しなければなりません。

育児や出産は、どの従業員にも起こりうるライフイベントです。

スムーズに対応できるよう、事業者側は今回の改正内容についてしっかりとおさらいしておきましょう。

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電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
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