近年は仕事における女性の活躍が望まれています。
そのためには、女性が偏見やライフイベントに縛られることなく、のびのびと働ける環境が不可欠です。
政府は2015年に女性活躍推進法を制定し、女性の社会的な活躍を後押ししています。
この記事では、女性活躍推進法の概要や、2022年4月の改正内容について解説します。
女性を雇用している事業であれば知っておくべき内容のため、ぜひお読みください。
女性活躍推進法とは
「女性活躍推進法」とは、女性が自身の能力・個性を生かし、自分の意志で働ける社会を実現するために制定された法律です。
正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」という名称がつけられています。
女性活躍推進法は、以下の3項目を原則として制定されています。
- 女性に対し、採用・昇進の機会を積極的に与えること
- 女性が仕事と家庭を両立させるために必要な環境を構築すること
- 仕事と家庭の両立において、女性本人の意思が尊重されること
2015年9月に交付され、2016年4月から施行されました。
時限立法であり、2025年度までの期限が定められています。
女性活躍推進法の方針
政府は女性活躍推進法の制定によって、労働環境における女性の立場を改善していくことを目指していきます。
本法に定められている3つの原則を紹介しましたが、政府の言葉で書かれているためわかりづらく感じるかもしれません。
以下では、3つの原則をよりくわしく、わかりやすく解説します。
- 女性に対し、採用・昇進の機会を積極的に与えること
- 女性が仕事と家庭を両立させるために必要な環境を構築すること
- 仕事と家庭の両立において、女性本人の意思が尊重されること
わかりやすくいうと「男女に関係なく仕事で評価される環境を目指す」ということです。
現代の日本においては、男女平等に高等教育を受け、大学に進学する権利がありますが、その一方で、企業で管理職に就いている女性は多くありません。
これは、女性が仕事において正当に評価される社会が実現されていないからだと考えられています。
理由として挙げられるのが、出産や育児による離職・休職です。
こうしたライフイベントによって女性は離職や休職を余儀なくされます。
一方で、継続して仕事をする女性の権利が奪われているのも事実です。
「女性に対し、採用・昇進の機会を積極的に与えること」は、「女性だから」という理由で機会を奪われることなく、男性と同じように仕事で評価される環境を構築するために定められている原則です。
企業に対し、女性を正当に評価し仕事で活躍できる体制づくりを呼びかけています。
わかりやすく言うと「ワーク・ライフ・バランスが良い環境を目指す」ということです。
「ワーク・ライフ・バランス」は、近年の労働環境で重要性が叫ばれているキーワードのひとつで、人生を仕事に支配されることなく、私生活と両立しながらストレスなく働いてくことが重要だと考えられています。
そのためには、企業側の体制づくりが不可欠です。
女性は、出産や子育てといったライフイベントがあることから、私生活と仕事の両立が男性以上に難しいと考えられています。
女性を積極的に労働へ参加させるためには、私生活と両立しやすい仕組みづくりが必要と言えるでしょう。
「女性が仕事と家庭を両立させるために必要な環境を構築すること」という原則は、女性が良好なワーク・ライフ・バランスを保てる環境の構築を企業に呼びかけるために設定されています。
わかりやすく言うと「女性の意思が尊重される環境を目指す」ということです。
ビジネスにおける女性の活躍は好ましいことです。
しかし、労働を女性に強制することはあってはなりません
あくまで、女性本人の意思が尊重される環境を実現する必要があります。
具体的には、ライフイベントのために仕事から退く、仕事を継続する、といった判断を女性本人に委ねることが大切です。
「仕事と家庭の両立において、女性本人の意思が尊重されること」という原則は、その重要性を呼びかけるために設定されていると言えます。
働く女性たちが置かれている状況
女性活躍推進法が施行・改正されてきた背景には、女性の社会的な活躍が不十分だと考えられていた状況があります。
働く女性たちは、具体的にどのような状況に置かれているのでしょうか。
内閣府男女共同参画曲が公表したデータによると、管理職に従事している女性は全体の14.8%にとどまっています。
対して、アメリカは40.7%、スウェーデンは40.2%、イギリスは36.8%に到達しており、日本の数値は世界的に低いと言える状況です。
(参照:第5次男女共同参画基本計画)
政府は、2003年に以下のような目標を提示しています。
「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」
しかし、現状においてもこの目標が到達される見込みはありません。
政府は現実的に達成し得る新しい目標として、以下を設定しました。
- 2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。
- そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める。
女性活躍推進法は、こうした女性が置かれている状況に対応していくために制定された法律です。
女性活躍推進法で求められる取り組み
女性活躍推進法では、条件に該当する企業に対し特定の取り組みを義務付けています。
以下では、女性活躍推進法で定められている取り組みの内容を具体的に紹介します。
一般事業主行動計画の策定・届出
女性活躍推進法では、一般事業主行動計画の策定・届出が義務化されています。
一般事業主行動計画とは、従業員の労働環境改善に向けて企業が取り組む内容を具体的に記載する計画書のようなものです。
主に「計画期間」「目標」「目標達成のための対策・実施時期」が記載されます。
厚生労働省は、一般事業主行動計画の策定を以下のような流れで進めるように案内しています。
- 自社の女性活躍に関する状況把握
- 具体的な行動内容の策定・社内周知
- 行動計画の届出
- 効果測定・改善案の検討
まず、自社でどの程度女性が活躍しているのか把握することが大切です。
以下の4点が女性の活躍を測る指標として定められています。
・労働者全体に対する女性の割合
・女性の勤続年数
・女性の労働時間
・管理職における女性の割合
これらの4点から、自社の課題を明確にしてください。
把握した状況と課題にもとづき、改善のために求められる具体的な行動計画を策定します。
A4用紙一枚程度の計画書としてまとめましょう。
計画書には以下の内容を記載する必要があります。
・計画期間
・具体的な数値目標
・取り組む内容
・取り組みを実施する時期
策定した内容は社内、および外部に公表する必要があります。
社内周知の方法としては、社内掲示板での掲示や電子メールなどが代表的です。
外部への情報公表方法として、自社のWebサイトに専用ページを設ける方法が挙げられます。
また、厚生労働省が運営する「女性の活躍・両立支援サイト」に自社の情報を登録することも可能です。
策定した一般事業主行動計画を、事業所を管轄している都道府県の労働局へ提出する必要があります。
期限は、策定後約3カ月までです。
窓口への提出、郵送のほか、電子申請での届出も可能です。
取り組みを実施しただけで終わらず、しっかりと効果測定を行うことが重要です。
PDCAサイクルを回し、より効果が出るように改善していくことが推奨されています。
女性の活躍に関する情報の公表
取り組みによって、自社においてどのように女性が活躍しているか、といった情報を外部に公表する必要があります。
自社のホームページなどに情報を掲載するのが一般的です。
厚生労働省運営の「女性の活躍推進企業データベース」に情報を登録する方法もあります。
2022年4月からの改正内容
2022年4月から、改正女性活躍推進法が施行となります。
どのような改正が加えられたのでしょうか?
女性活躍推進法では、上記の一般事業主行動計画の策定・届出、女性の活躍に関する情報の公表を対象事業者に義務付けています。
これまで、女性活躍推進法の対象は「常時雇用する労働者が301人以上の企業」でした。
2022年4月からの改正によって範囲が拡大され、常時雇用する労働者が101人以上の企業も対象になっています。
これまで対象外だった小規模な事業者も女性活躍推進法に準拠しなければならないため注意が必要です。
「常時雇用する労働者」の定義
常時雇用する労働者とは、期限を設けず雇用しているすべての労働者です。
雇用形態は関係ありません。
正社員だけではなく、契約社員、パート、アルバイトなども、雇用期間が定められていなければ「常時雇用する労働者」に含める必要があります。
また、雇用期間が定められている場合も、すでに1年以上雇用されている、もしくは1年以上雇用することが見込まれる労働者は、「常時雇用する労働者」に含まなければなりません。
契約社員などはこのケースに該当することが多いため、慎重に判断する必要があります。
なお、女性活躍推進法のほかにも、「常時雇用(使用)する労働者」という表現が登場するケースは少なくありません。
労働基準法、労働安全衛生法、障害者雇用促進法などが代表例です。
法令によって「常時雇用(使用)する労働者」の定義は細かく異なるため、それぞれの法令の条文を確認しなければなりません。
まとめ
女性活躍推進法の概要や改正内容についてお話しました。
女性を雇用している対象事業者は、本法令に準拠しなければなりません。
女性従業員の積極的な活躍を期待するうえでも、女性たちが働きやすい環境づくりに取り組むことが大切です。
2022年4月の改正によって、常時雇用している労働者が101人以上の事業者も対象になっています。
新しく対象となった小・中規模事業者も多いため、取り組みの内容について確認しておきましょう。
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資格
一般建設業 東京都知事許可(電気通信工事業):(般-4)第148417号
古物商 東京都公安委員会許可(事務機器商):第304361804342号
労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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