近年のトレンドとして、電気通信事業法の改正が挙げられます。
2022年の公布段階から、特にCookie規制や届け出制などの部分が気になっている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、電気通信事業法の基本から、改正に関する注意点や対策などについてご紹介します。
電気通信事業法とは?
公共性のある電気通信事業の運営を適正・合理化し、公正な競争を促すための法律が電気通信事業法です。
電気通信サービス(インターネット・携帯電話など)の円滑な提供に関わる仕組みの整備により、ユーザの利益と国民の利益確保が大きな目的とされます。
今回の改正は「電気通信事業法の一部を改正する法律」で、以下の目的が掲げられました。
- 情報通信インフラの提供確保
- 安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保
- 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備
法改正の背景とは?
次に、改正の背景について考えていきます。
本件についてはいくつかの課題がありましたが、ここでは「安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」に係る利用者情報の適正な取り扱いについて見てみましょう。
近年、情報通信技術の進化に伴って、電気通信事業者における利用者情報の漏えいや不適正な取扱いといったリスクが高まっています。
そこで総務省は、「電気通信事業者ガバナンス検討会」を開催し、対策を検討していました。
その結果、旧法下では利用者情報の適正な取扱いが確保できる仕組みが整備されておらず、事業者の自主的な取り組みに委ねられているということが分かったのです。
意図しない形で利用者情報が第三者に送信されるケースもあり、利用者の信頼を損なう問題も生じていました。
こうした点が考慮され、電気通信事業法改正につながったのです。
施行時期は?
「電気通信事業法の一部を改正する法律」は、2022年6月17日に公布されています。
施行は2023年6月17日を予定しています。
ただし、73条の2(媒介等の業務の届け出等)関連の改正については、施行が2022年9月1日になる予定です。
【2023年】電気通信事業法改正における3つの重要ポイント
電気通信事業法改正は、主に3つのポイントに分けられます。
Cookie情報の利用規制につながるケースがあるため、「Cookie規制」と通称されています。
なお、CookieとはユーザがWebサイトを訪れた際の履歴や入力内容、環境といった情報が記録されたデータのことです。
Cookieは快適なインターネット利用に活用されるのが基本です。
一方、意図せずユーザの閲覧・行動履歴が収集されるケースもあり、プライバシー保護の観点から問題が指摘されることもありました。
2022年4月施行の個人情報保護法では、Cookieが個人関連情報に該当することにもなりました。
これにより、個人関連情報を第三者へ提供し、個人情報へと紐付ける場合には、本人の同意が必須となったのです。
適用となる事業者は、情報送信指令通信を行う際に、以下の対応が求められます。
- 総務省令で定める事項を利用者に通知する
- 総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く
具体的な対策については後述します。
ポイント2.特定利用者情報の取り扱い義務ができる
2点目は、電気通信事業者に対する特定利用者情報の取り扱い義務化です。
特定利用者情報とは、具体的に以下の情報等が該当します(電気通信事業法27条の5)。
- 通信の秘密に関する情報
- 利用者を識別することができる情報であって、総務省令で定めるもの
通信の秘密に関する情報とは、いわゆる電話やメールなど個人間の通信に含まれる内容を指します。
一方利用者識別情報とは、サービスを利用した際、ユーザに付与されるIDや番号などのことです。
上記の情報を取り扱う事業者に対しては、以下の義務が課せられます。
- 情報取扱規程の整備・届け出をする義務(同法27条の6)
- 情報取扱方針を策定・公表する義務(同法27条の8)
- 特定利用者情報の取り扱いに関する自己評価を実施する義務(同法27条の9)
- 特定利用者情報統括管理者を選任し、届け出る義務(同法27条の10)
- 特定利用者情報が漏えいしたときに報告する義務(同法28条1項2号ロ)
なお、具体的な対象事業者は、総務大臣によって指定される予定であり、詳細は今後総務省令によって定められます。
ポイント3.届け出制の対象拡大
3つ目は、これまで届け出が不要とされてきた第三号事業を営む一部の事業者に対し、届け出制が適用になる点です(電気通信事業法164条1項3号ロ・ハ)。
対象となるのは、検索情報電気通信役務および媒介相当電気通信役務です。
検索情報電気通信役務とは、Googleなどのいわゆる検索サービスです。
より詳しく表すなら、ユーザが入力したキーワードに対し、そのキーワードを含めたWebページのURLなどを出力する電気通信設備の提供者、となります。
一方、媒介相当電気通信役務とは、いわゆるSNS事業者です。
不特定多数の利用者による投稿を記録・送信する電位通信薬務を指すため、たとえばTwitterやInstagramなどが対象になります。
なお、一部としたのは、事業規模に応じて適用範囲が異なるからです。
あくまでも、利用者の範囲・利用状況を勘案し、利用者の利益に対する影響が大きいと総務省令で定めるものが対象となります。
背景としては、検索サービスやSNSの普及があります。
利用者情報の適切な取り扱いを義務づけることが狙いで、今回届け出制の範囲が拡大されました。
施行後、該当となった事業者は総務大臣へ電気通信事業者として届け出を行い、ルールに従う必要があります。
Cookie規制(外部送信規制)の対象事業者とは?
大枠である電気通信事業法は、以下の条件を満たした事業者に対して適用されます。
- 「電気通信事業」を行っている者
- 電気通信事業を「営んでいる」者
- 適用除外に該当しない者
これだけを見ると、対象は大規模な携帯電話会社やインターネットプロバイダなどに限定されるように感じられます。
しかし実際には、広告料収入を含む営利目的事業を行っている事業者も、電気通信事業法の適用を受ける電気通信事業者とみなされる可能性があります。
具体的には、以下のような事業が挙げられます。
- SNS
- MVNO
- 決済代行
- チャット
- 電話転送
- ポータルサイト運営
など
上記を踏まえた上で、Cookie規制の対象となる事業者についてより細かな条件を見ていきましょう。
改正電気通信事業法では、「電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)」と定めています。
加えて、第22条の2の27では電気通信役務を、他人の需要に応ずるために提供する事業者を対処にするとされています。
たとえば、以下のようなサービスは対象内です。
- 利用者間でメッセージをやり取りできるサービス
- 利用者がアップロードしたデータを不特定の利用者に送信できるサービス
- Web検索サービス
- その他、不特定の利用者へのデータ送信機能があり、不特定の利用者による閲覧に供することを目的とした各種サービス
これはつまり、一般的にオンラインサービスと呼ばれる事業の多くが該当すると考えられます。
来る法改正……企業が取るべき措置とは?
施行日までわずかとなった現状、企業はどのような対策をとるのがよいのでしょうか?
Cookie規制に絞り、対策の概要をお伝えします。
通知公表
事前に利用者に通知、もしくは容易に知り得る状況に置くことを通知公表と言います。
通知すべき内容は以下となります。
- 送信されることになる利用者関連の情報の内容
- 情報が送信される電気通信設備
- その他総務省令で定める事項
既にCookie利用に関するプライバシーポリシーやクッキーポリシーを公表している企業も多いでしょう。
この場合は、今回の改正に合わせて公表内容を適合・整備することで対応は完了です。
なお、自社での整備が難しい場合は、外部専門機関への依頼もおすすめします。
同意取得
利用者から事前に同意を得る方法で、オプトインとも呼ばれます。
Webサイト等でもよく見かける画面なので、見覚えがあるユーザも多いでしょう。
同意取得をサイトで利用するのであれば、CMP(Consent Management Platform)ツールの導入が便利です。
実装することで、データ取得や利用状況案内を行い、同意取得とそのステータス管理が行えます。
また、一部のCMPはGDPRといった海外法への対応も可能です。
自社で同意取得の仕組みを整えるより、はるかに簡単で確実な点は大きなメリットと言えるでしょう。
オプトアウト
上記にある2つの方法以外を選択する場合は、オプトアウトの動線設置が必要です。
この場合、以下の対応が求められます。
- ユーザに関する情報の送信・利用についてユーザの求めに応じて停止できる措置を講じること
- ユーザがその情報において、上記に規定する措置の適用を求めていない意思表示が行えること
- オプトアウト措置と、オプトアウト措置に係るユーザの求めの受付方法、その他の総務省令で定める事項を、ユーザが容易に知り得る状態に置くこと
上記はつまり、利用者が分かりやすい形と場所にオプトアウトページのURLなどを置き、値用停止措置方法を記載することが求められます。
まとめ
電気通信事業法改正のうち、今回はCookie規制を中心とした「利用者情報の適正な取扱いに係る制度整備」を解説しました。
すでに、施行までわずかとも言える状況です。
対策がまだの方は、早めに改正案を理解し、措置を検討しましょう。
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資格
一般建設業 東京都知事許可(電気通信工事業):(般-4)第148417号
古物商 東京都公安委員会許可(事務機器商):第304361804342号
労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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