燃料価格の高騰や円安、国内の電力供給不足などを理由に、電気代の高騰が深刻化しています。
エネルギーコストの増大は、事業の収益率低下を招く要因です。
早急に削減策を実施し、電気代高騰による影響を抑制する必要があります。
そこで今回は、電気代が高騰している理由や一般企業における電気の使われ方、削減に向けた取り組みについてご紹介します。
電気代が高くなっている理由とは?
まずは、電気代が高くなっている理由をさまざまな観点から徹底解説します。
燃料価格の高騰
日本国内における電力の大部分は、火力発電によって賄われています。
しかし、近年はその燃料となる石炭・LNG(液化天然ガス)・原油などの価格が世界的に高騰しているのです。
数ある原因の一つに、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が挙げられます。
ウクライナ侵攻を受けて欧米諸国は、ロシア産資源の輸入を制限し、世界的にエネルギー供給が引き締められました。
加えて、コロナ禍からの経済回復に伴う新興国の需要増加なども重なり、燃料価格は軒並み上昇しています。
また、企業や一般家庭の電気代には「燃料費調整額」という料金が含まれていますが、これは石炭やLNG(液化天然ガス)、原油の価格変動に連動して毎月変わります。
燃料価格が高騰すると燃料費調整額が上乗せされ、結果的に電気代が割高となる仕組みです。
円安の影響
2022年以降、日本円の対ドルレートは大幅な円安となり、一時は1ドル160円近い水準まで下落しました。
この急激な円安により、ドル建てで輸入している燃料の調達コストが跳ね上がっています。
さらに燃料価格自体も高騰しているため、円安と燃料高の「ダブルパンチ」ともいえる状況です。
輸入価格上昇分は、燃料価格の変動を電気代に反映させる「燃料費調整制度」の上限により、ある程度は緩和されます。
しかし、同制度の上限を撤廃する電力会社が相次いでおり、その効果は限定的となりつつあるでしょう。
このように、企業や私たち個人が負担する電気代は、為替レートの影響を大きく受けていることが分かります。
国内の電力供給不足
2011年3月に発生した東日本大震災以降、原子力発電所の多くが稼働停止となっています。
老朽化した火力発電所の廃止も相次いでおり、国内の電力供給力は大幅に低下しているのです。
この状態で電力の需給がひっ迫すると、限界費用の高い電源を稼働せざるを得なくなり、卸電力取引価格が上昇します。
これが小売価格に波及し、電気料金の値上げ圧力となっているのです。
再生可能エネルギー賦課金の値上げ
太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及を後押しするため、電気料金には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が上乗せされています。
この賦課金は、再エネ発電設備の導入拡大に伴い年々値上がりしています。
2024年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1kWh当たり3.49円となりました。
毎月300kWhの電気を使用する標準家庭においては、賦課金だけで月1,000円程度、年単位で12,000円程度の負担が増えるとされます。
これを企業で試算した場合、再生可能エネルギー発電促進賦課金だけで相当な負担になるでしょう。
再エネ賦課金の値上げも、電気代を押し上げる一因となっているのです。
電力システム改革の影響
2016年の電力小売全面自由化により、新電力と呼ばれる新規参入事業者が相次ぎ、電力市場に競争原理が導入されました。
当初は競争激化により電気料金の引き下げが期待されていました。
しかし、一部の新電力は市場連動型の料金プランを提供しており、卸電力取引市場の価格高騰をそのまま小売価格に反映させています。
価格変動リスクを利用者側に転嫁した結果、大きく電気代は下がらず、むしろ上がるケースが見られるようになったのです。
一般企業における電気の使われ方とは?
一般企業における1日の電気の使われ方と、電力消費比率を用途別でご紹介します。
電気の使い方を把握し、意識的に改善することが電気代削減の第一歩です。
1日の電気の使われ方
オフィスビルでは、一般的な業務時間である10〜17時に電力消費が集中する傾向があります。
これは従業員が出勤し、パソコンやコピー機(複合機)などのOA機器を使用したり、照明を使用したりするためです。
特に昼休みの12〜13時にかけては、空調と照明の稼働が高まり、電力消費はピークに達します。
一方、夜間の消費電力は昼間に比べ、約30%程度まで下がります。
業務終了後に従業員が帰宅し、OA機器や照明の使用率が下がるためです。
ただし、サーバールームをはじめとする24時間稼働の設備がある場合は、一定の電力消費が発生します。
業種や事業規模によっては、夜間においても電力消費が続く可能性があるのです。
用途別電力消費比率
オフィスビルを例とした用途別の電力消費比率は、OA機器・空調・照明の3つで全体の8割を占めています。
とりわけOA機器の電力消費比率が大きな割合を占めており、次いで空調、照明と続きます。
このことから、昼間のOA機器・空調・照明の電力消費を抑制することが、オフィスビルの電気代削減に効果的であると考えられます。
具体的な取り組みとしては、省エネタイプのOA機器を導入したり、空調を適切な温度設定にしたりするとよいでしょう。
照明の小まめな消灯など、社内で意識的に取り組むことが節電につながります。
電気代削減のためには、これらの分野における省エネ対策が重要となるでしょう。
電気代が極端に高くなった!考えられる原因は?
電気代の高騰は、経営に打撃を与えかねない問題です。
自社の電気代が突然跳ね上がったと感じたら、まずは冷静に原因を探る必要があります。
ここでは、電気代が急激に上昇した際に考えられる原因について解説します。
電気の使用量が増えた
単純に電気の使用量が増加すれば、電気代も高くなります。
以下、「照明の電力使用量」「冷暖房機器の電力使用量」「OA機器の電力使用量」といった3つのポイントから解説します。
照明の電力使用量が増えた
事業規模の拡大や従業員数の増加に伴い、照明の使用時間が長くなったり、使用頻度が上がったりすると、電力消費量は増加します。
そもそも照明は、オフィスの消費電力の約1/4を占めるため、使用量増加が電気代に与える影響は大きくなります。
オフィスの照明をつけっぱなしにしたり、不要な場所まで照らしたりしていると、知らず知らずのうちに電力を浪費していくのです。
個室や会議室、休憩スペースに不要な照明はないか、改めて確認してみましょう。
また、照明器具ごとに消費電力は大きく異なります。
例えば、白熱電球と比較すると、LED電球は消費電力が約1/8程度と少なく、非常に長寿命なのが特徴です。
数年に一度の交換で済むため、メンテナンスコストも削減できます。
事業規模の拡大などで照明の数を増やす場合、最初からLED化を図るとよいでしょう。
さらに照明の配置も電力消費量に影響します。
オフィス全体を均一に照らすのではなく、執務スペースを重点的に照らす「タスク・アンビエント照明」などの手法を取り入れることで、消費電力を抑制できる可能性があります。
改めて自社における照明の使用状況を見直し、節電に向けた取り組みを推進しましょう。
冷暖房機器の電力使用量が増えた
冷暖房設備は、オフィスの消費電力の大部分を占めています。
特に使用頻度の多い夏場は、1年を通して最も電気代が高くなる時期です。
できるだけ削減したい一方、近年の酷暑は人命に関わるレベルであるため、無理な節電は避けるべきでしょう。
夏場の場合、冷房時の温度設定は、環境庁が推奨する室温28℃前後になるよう設定してください。
あくまでも「室温を28℃前後」にキープすることが重要であり、エアコンの温度設定を28℃に設定するのではないため、混同しないようにしましょう。
なお、冬場は室温20℃前後を目安に、暖房の温度設定を行ってください。
この他に、エアコンのフィルターを定期的に清掃することで冷暖房効率が上がり、消費電力を抑えられます。
さらに直射日光を受ける場所に室外機があったり、経年劣化で冷媒ガスが漏れていたりしても冷房効率が低下するため注意しましょう。
このように冷暖の使用頻度を見直し、適切な温度設定や定期メンテナンスを行うことで、電力消費を大幅に削減できます。
OA機器の電力使用量が増えた
コピー機(複合機)やパソコンなどは、常時電力を消費するため、台数に比例して電気使用量が増大します。
特に古いOA機器は電力効率が悪く、新しい機器に比べて消費電力が大きくなる傾向にあります。
そのため、新しくOA機器を導入する際は、省エネ性能の高い機種を選ぶとよいでしょう。
例えば、「国際エネルギースターロゴ」が付与された製品は、一定の省エネ基準をクリアしています。
さらなる電気代の高騰が予測されている今、こうした最新のOA機器を積極的に導入したいところです。
また、スリープモードへの移行時間を短くしたり、使用しない時間帯は主電源をオフにしたりと、OA機器の設定を見直しましょう。
社内の機器・設備を定期的に見直し、不要な電力消費が起きていないか確認することが大切です。
燃料費調整額が高騰している
電気代は通常、以下4項目で構成されます。
- 基本料金
- 電力量料金
- 燃料費調整額
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
基本料金とは、契約しているアンペア数や契約容量に応じて定額で決まる料金です。
使用量に関係なく毎月発生する固定費用と考えてよいでしょう。
電力量料金は、1カ月に使用した電力量に応じて変動する料金で、電化製品の使用頻度や使用時間に比例して高くなります。
ここで重要なのが、石炭・LNG(液化天然ガス)・原油などの燃料価格に応じて変動する燃料費調整額です。
近年、世界的な燃料価格の高騰により燃料費調整額が大幅に上昇し、結果的に電気代も割高となっています。
燃料費調整額が与える影響は大きいため、電力プランを選ぶ際は燃料費調整額の上限設定の有無を確認することが大切です。
上限がないプランを契約している場合、燃料価格が高騰したときに、超過分がそのまま電気代に上乗せされます。
今一度、現在契約している料金プランを確認し、燃料費調整額の単価や上限設定の有無をチェックするとよいでしょう。
企業の電気代削減ポイントは?
ここでは、企業が取り組むべき電気代削減のポイントについてご紹介します。
1.空調設備の節電
オフィスの電力消費比率において、空調設備が占める割合は非常に大きくなります。
そのため、空調設備の効率的な運用と節電対策が電気代削減のポイントといえるでしょう。
最初に取り組むべきことは、エアコンの温度設定を適切に管理することです。
エアコンの設定温度を1度変えるだけで、消費電力を約10%削減できるとされています。
上記の通り、夏場は室温28℃前後、冬場は20℃前後になるように、エアコンの設定温度を調整してください。
オフィス空間の快適性を保ちつつ、無駄な電力消費を抑えるようにしましょう。
また、老朽化した空調設備を最新の省エネタイプに買い替えるのも効果的です。
例えば、インバーター式のエアコンは運転状況に応じて最適な出力で動作するため、従来型と比べて消費電力を大幅に削減できます。
2.照明のLED化
照明のLED化により、電気代を大きく削減できる可能性があります。
LED電球は、同じ明るさの光を出すのに必要な電力が、白熱電球や蛍光灯に比べて少ないのが特徴です。
一般的には、発熱電球と比べて約85%の節電効果が期待できるとされます。
さらにLED電球の寿命は白熱電球の約40倍、蛍光灯の約2.5倍とされており、ランニングコストにも優れます。
照明のLED化にはコストがかかりますが、国や自治体が実施する助成金制度を利用することで、その負担を軽減できるでしょう。
3.OA機器の節電
コピー機(複合機)などのOA機器には、待機状態が続くと自動的に電力消費を抑える省エネモードが用意されています。
省エネモードをオンにした場合、一定時間経過後にディスプレイが消えたり、スリープ状態になったりと、待機電力を大幅に削減します。
手動にはなるものの、昼休みに各種機器の電源を切る、コンセントからプラグを抜くのも効果的でしょう。
こうしたわずかな積み重ねが、大きな節電につながるのです。
4.トイレの節電
トイレのウォシュレットは、便座を温めるために常に電力を消費していますが、便座のふたが開いているかどうかで温度設定が変化します。
冬場を例に挙げると、ふたを開けたときと閉めたときで、便座の温度が約3度違うとされます。
その消費電力には10~20%の差が出るため、「便器のふたを閉める」だけで十分な節電効果が得られるのです。
使用後は必ずふたを閉めるよう社内に周知し、無駄な電力消費を防ぎましょう。
5.従業員の節電意識向上
社内一丸となって節電に取り組むことが、電気代削減への近道です。
経営者や管理職から積極的に節電を呼びかけ、全社的な取り組みとして推進しましょう。
具体的には、使用していない部屋の照明を消す、パソコンの電源を切るなど、こまめな節電を習慣付けます。
社内に節電ポスターを掲示し、節電意識を高めることも効果的です。
6.料金プランの変更
コストメリットを重視するなら、新電力会社が提供する市場連動型プランに変更するとよいでしょう。
市場連動型プランは、電力の需給バランスに応じて30分ごとに料金が変動するため、条件がそろえば大幅に電気代を削減できます。
ただし、解約金の有無や料金が変動するリスクについて理解しておく必要があります。
7.電力会社の見直し
新電力会社は、大手電力会社よりも安い料金プランを提供している場合があります。
例えば、再生可能エネルギーを積極的に活用したプランや、卸電力取引市場から電気を仕入れることで価格を抑えたプランなどです。
電力会社の見直しにより、電気代を削減できる可能性は十分にあるでしょう。
8.太陽光発電や蓄電池の導入
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを電気に変換するクリーンなエネルギーです。
自家消費型の太陽光発電システムや蓄電池を導入することで、中長期的に見ると、電気代を大幅に削減できる可能性があります。
具体的には、昼間の日差しが強い時間帯に発電した電気を自家消費することで、電力会社から購入する電力量を減らせるでしょう。
余剰電力が出た場合は、電力会社に売電することも可能です。
また、蓄電池があれば、発電した電気を貯めておくことができ、夜間などの太陽光発電ができない時間帯に使用できます。
「電力自由化」で何が変わる?
2016年4月から始まった電力の小売全面自由化、いわゆる「電力自由化」によって、新電力会社が次々と設立されました。
今一度、電力自由化が企業に与える影響やメリットをおさらいします。
1.電力会社を自由に選べるようになる
電力自由化以前、消費者は特定の電力会社と契約するしかなく、現在のように電力会社やプランを選ぶことができませんでした。
自由化後は、さまざまな企業が電力業界に新規参入し、独自のサービスやプランを提供するようになったのです。
例えば、ガス会社系の電力会社には、電気とガスのセット割引で料金が安くなったり、それぞれの請求を一つにまとめられたりするプランを提供しているところがあります。
さらに、自治体が設立した地域新電力や「再エネ電力」の供給に特化する会社なども登場しました。
自社に最適な電力会社を自由に選べるようになったのが、最大のメリットといえるでしょう。
2.電気料金が安くなる可能性がある
電力自由化によって企業間競争が促され、各社は顧客獲得のために魅力的な料金プランを提供するようになりました。
例えば、新電力会社の多くは大手電力会社の主力料金プランである「従量電灯」よりも安い料金単価を設定しています。
さらに自社サービスとのセット割引など、お得なサービスやプログラムを用意する新電力会社もあります。
必ずしも電気料金が安くなるとは限りませんが、コストメリットの点で優れるでしょう。
3.再生可能エネルギーの選択肢が増える
太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再エネ電力はCo2排出量が少なく、環境に優しいことから注目されています。
新電力会社から再エネ電力を購入することで、間接的ながら再エネ普及に貢献できるでしょう。
ただし、再エネ電力の調達にはいまだ課題も多く、電力会社側に調達方針や電源構成などの情報開示を求める声があります。
4.電気料金が複雑化する
燃料費調整額の変動や契約期間の縛りなど、電力会社自由化以降は電気料金が複雑化しています。
料金体系が分かりにくいと、かえって損をするリスクもあるのです。
そのため、できるだけシンプルかつ分かりやすいプランを提供している電力会社を選ぶとよいでしょう。
法人向けのサービスが充実した「ビジ助でんき」とは?
「ビジ助でんき」は、スターティアが提供する法人向けの新電力サービスです。
電気の小売部分を「ビジ助でんき」が担当し、送配電については現状の送配電事業者が行うため、電力品質が変わることはありません。
お客様の電力使用状況に合わせて無駄のない料金プランをご提案し、電気代削減を実現いたします。
また、請求業務の効率化や問い合わせ窓口の一本化など、お客様のニーズに合わせたさまざまなサービスを提供しています。
さらに当社のビジネス向けトータルサポートサービス「ビジ助」に同時加入することで、月額料金などの優遇もあります。
電力会社の切り替えを検討されている方は、ぜひ一度「ビジ助でんき」のサービス内容をご確認ください。
まとめ
燃料価格の上昇や円安、電力供給不足などが重なり、今後も電気代は高騰すると予測されています。
本記事でご紹介した8つの取り組みを実践し、電気代削減を着実に目指しましょう。
加えて新電力サービスの「ビジ助でんき」に切り替え、経費削減と業務効率化の両立を目指すのもおすすめです。
「ビジ助でんき」について詳しく知りたい方は、サービスページをご確認ください。
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