会社を経営している人や親族内に経営者がいる人にとって、事業承継はとても身近なことです。
しかし、事業承継は会社員として働く人にも決して関係のない話ではありません。経営者が変わることで経営方針や社員への待遇だけでなく、取引先にまで影響があります。中小企業の経営者の年齢が上がり続けており、数年以内には団塊世代の大量引退の時代がやってきます。
事業承継とは?
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。とくに中小企業にとっては、オーナーや社長の経営手腕が存立基盤と直結している場合が多いので、後継者を誰にするかという点が大変重要になってきます。事業承継にとって大事なポイントは「①現状の把握・分析」をして「②いつ」「③誰に」「④何を」「⑤どうやって」承継するかということです。
①現状の把握と分析
会社の現状として資産状況、キャッシュフロー、収益と今後の見込み、役員や従業員の構成など会社の数字だけでなく、経営者自身の現状、後継者の現状などを客観的に把握しなければなりません。それらを総合的にみて、今後の事業計画を考えましょう。その際事業承継した後もその会社が付加価値を創出し続け、利益を出し続けることができる会社かどうかも考える必要があります。
②いつ事業を引き継ぐのか?
生前に引き継いで余生を楽しむのか、死後に引き継いでもらうのか、それぞれの事業計画と経営者のライフプランを併せて、承継計画を考えることが大切です。事業承継の引継ぎは10年計画と言われていますので、余裕を持った承継計画を立てることをおすすめします。
③誰に引き継ぐのか?
事業を引き継ぐ相手は主に「親族」「親族外の役員・従業員」「外部の人」の3通りとなります。親族や役員、従業員に引き継ぐ場合は後継者教育もしなければならないので、多くの時間が必要となります。また息子や娘が継いでくれるだろうと自分の中で思っていても、当の本人たちは継ぐ気が無い場合もあります。親族内での承継を考えている方は、早い段階で後継者候補の親族と意思確認を行いましょう。
④何を引き継ぐのか?
事業承継は、後継者を決めておくだけではありません。事業承継で引き継ぐものには、株式と経営権があります。株式を引き継ぐことを「所有承継」、経営権を引き継ぐことを「経営承継」といいます。M&Aでもこの部分は同じで、株式譲渡・事業譲渡の両方もしくはいずれかの譲渡が可能です。
株式と経営権は引き継ぐ相手や組み合わせ、割合によっては、トラブルを招く恐れがあります。たとえば経営者の死後、株式を親族、経営権を親族外の役員が引き継いだとします。その後、親族と経営権を引き継いだ役員との間に確執が生じたら、その煽りを従業員が受けることも十分考えられます。このようなことにならないために、誰に何を引き継ぐかだけでなく、会社の理念や経営者の想いを伝えるようにしましょう。
⑤どうやって引き継ぐのか?
後継者、引き継ぐ内容が決まったら、譲渡するのか、贈与するのかを決めましょう。
事業承継に伴うリスクとは?
事業承継でよく問題となっているのは、後継者の資金不足です。事業承継には、事業用資産や株式を買い取るための資金、事業用資産や株式を承継した際に発生する相続税・贈与税を納税するための資金、更には旧経営者の遺族への遺留分を支払うための資金などが必要といわれています。経営が順調であればあるほど株式の評価額が高くなるので、後継者が引き継ぎたくてもそれが叶わない可能性も大いにあります。特にオーナー経営者の場合は株の大部分を自身で所有していることが多いので、このような問題に陥りやすくなります。
現経営者ができる対策
後継者を受取人に指定した生命保険に加入し資金の準備をする、贈与税や相続税が一度に降りかかってこないようにするために生前に分割して株式の贈与・譲渡を行う、など様々な方法があります。また、旧役員への退職金支払いや分社化、信託による後継者指名、不動産の取得など株価引き下げによる相続・贈与の税金対策、議決権のない種類株式を発行することによる相続発生時の相続人間の対立防止、従業員持ち株会などによる一族以外の安定株をつくっておくことも大切です。
後継者の資金対応策
【平成30年改正】事業承継税制が使える!
事業承継にかかる税金の減税によって、より事業を次世代に引き継ぎやすくなりました。 なぜならこの制度を利用して非上場の自社株を後継者に引き継ぐ場合、相続税や贈与税が最終的に100%免除されることになったからです。
事業承継は、いつか必ず訪れます。重要だと頭ではわかっていても、目の前の緊急度の高い問題にかき消され、後回しになりがちな問題です。しかし早い段階から事業承継について考えておくことで、後継者や会社にとって良いタイミングにスムーズに引き継ぐことができるのではないかと考えます。ぜひ、早めの準備をご検討ください。
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