近年、政府の方針のひとつとなっているのが、「中小企業のDX化」です。
経済的な理由からITツールの導入にハードルを感じている企業のために、「IT導入補助金」という制度を実施しています。
この記事では、このIT導入補助金の概要や補助対象、申請方法について解説します。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、企業の業務効率化、生産性向上に役立つITツールの導入経費を補助する制度です。
正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といいます。
「中小企業生産性革命推進事業」の一環として2017年より経済産業省が実施しており2022年度で6回目を迎えました。
2022年度は通常枠に加え、デジタル化基盤導入枠が追加されています。
補助対象の例として挙げられるのは、業務効率化のためのITツール、クライアントの情報を管理するクラウドシステム、テレワークのタスク管理やコミュニケーションなどをサポートするツールなどです。
本補助金には、こうしたツール・システムの導入を推進し、国内企業の生産性を底上げする狙いがあります。
専門の事業者が申請のサポートを行う仕組みが整っている点も、本補助金の特徴です。
ベンダーやサービス事業者が申請のサポートを行うため、ITに関するリテラシーが十分ではない事業者でも問題なく申請できます。
IT導入補助金の対象事業者
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者を対象としています。
政府による中小企業・小規模事業者の定義は以下のとおりです。
- 中小企業
業種 | 定義 |
---|---|
① 製造業・建設業・運輸業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時勤務する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
② 卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主 |
③ サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主 |
④ 小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主 |
⑤ ゴム製品製造業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が900人以下の会社及び個人事業主 |
⑥ ソフトウェア業 又は情報処理サービス業 |
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
⑦ 旅館業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時勤務する従業員の数が200人以下の会社及び個人事業主 |
⑧ 医療法人・社会福祉法人 | 常時勤務する従業員の数が300人以下の者 |
⑨ その他の業種(上記以外) | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
⑩ 学校法人 | 常時勤務する従業員の数が300人以下の者 |
⑪ 商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | 常時勤務する従業員の数が100人以下の者 |
⑫ 中小企業支援法第 2 条第 1 項第 4 号に規定される中小企業団体 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑬ 特別の法律によって設立された組合又はその連合会 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑭ 財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑮ 特定非営利活動法人 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
- 小規模事業者
業種 | 定義 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時勤務する従業員の数が 5 人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時勤務する従業員の数が 20 人以下の会社及び個人事業主 |
製造業その他 | 常時勤務する従業員の数が 20 人以下の会社及び個人事業主 |
IT導入補助金の利用を検討している場合は、まず自社が補助対象になっているかチェックしましょう。
IT導入補助金の補助対象
IT導入補助金の補助対象となるITツールは大分類Ⅰ「ソフトウェア」大分類Ⅱ「オプション」大分類Ⅲ「役務」に分けられます。
これらの大分類のなかで、さらに9つのカテゴリーが設定されています。
大分類Ⅰ「ソフトウェア」 | 大分類Ⅱ「オプション」 | 大分類Ⅲ「役務」 | |
---|---|---|---|
小分類 | カテゴリー1:単体ソフトウェア カテゴリー2:連携型ソフトウェア |
カテゴリー3:拡張機能 カテゴリー4:データ連携ツール カテゴリー5:セキュリティ |
カテゴリー6:導入コンサルティング カテゴリー7:導入設定・マニュアル作成・導入研修 カテゴリー8:保守サポート カテゴリー9:ハードウェアレンタル |
通常枠の申請条件となるプロセス
大分類Ⅰ「ソフトウェア」には、以下のプロセスが設定されています。
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 会計・財務・資産・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練
- 業種固有
- 汎用・自動化・分析ツール
導入しようとしているツールで改善が期待できるプロセスがいくつあるかによって、申請できるIT導入補助金の類型が異なります。
ITツールを導入する場合は、何個のプロセスに対応できるかの確認が必要です。
補助額と申請条件
IT導入補助金は通常枠のA・B類型、デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型の合計4つの類型に分けられます。
それぞれ対象となるITツールが異なる、賃上げ目標の策定要件がある、といった違いがあります。
以下では、それぞれの類型について解説します。
通常枠
通常はA類型とB類型に分けられます。
B類型のほうが要求されるプロセスが多い分、補助額が高額です。
具体的には、以下のような補助額・要件が定められています。
A類型 | B類型 | |
---|---|---|
補助額 | 30~150万円 | 150~450万円 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
必要な業務プロセス | 1項目以上 | 4項目以上 |
賃上げ目標の要件 | 加点 | 必須 |
デジタル化基盤導入類型
デジタル化基盤導入類型は、デジタル化基盤導入枠のひとつとして2022年に新しく新設された類型です。
「インボイス制度(適格請求書保存方式)」への対応を目的としています。
補助率が通常枠よりも高い点や、ハードウェアの導入費用も対象となる点などが特徴です。
ITツール | PC・タブレット等 | レジ・券売機 | |
---|---|---|---|
補助額 | 5~350万円 | ~10万円 | ~20万円 |
機能要件 | 5万円~50万円部分: 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 50万円超~350万円部分: 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
左記ITツールの使用に資するもの | ※同左 |
補助率 | 5万円~50万円部分:3/4以内 50万円超~350万円部分:2/3以内 |
1/2以内 | 1/2以内 |
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費 |
複数社連携IT導入類型
複数社連携IT導入類型はデジタル化基盤導入枠に組み込まれている類型です。
デジタル化基盤導入類型と同様、2022年に新設されました。
複数の中小・小規模事業者が連携してITツールを導入することを補助する制度です。
以下の経費が補助されます。
基盤導入経費 | 消費動向等分析経費 | 参画事業者のとりまとめに係る事務費・専門家費 | |
---|---|---|---|
補助されるツール | 【ITツール】 決済ソフト、ECソフト、会計ソフト 【ハードウェア】 |
ITツール:消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム
ハードウェア:AIカメラ、ビーコン、デジタルサイネージ |
|
補助率・補助上限額 | 1/2~3/4 | 2/3 | 補助上限は3,000万円 (基盤導入経費・消費動向等分析経費の合計) |
以下では、事業者がIT導入補助金を利用する際の申請の流れを解説します。
ツールの選定
まずは、補助金を利用して導入したいITツールを選びましょう。
定められている対象ツールのなかから選ぶ必要がありますが、何よりも自社のニーズに適合したツールを判断することが大切です。
「gBizID」の登録
IT導入補助金を利用する場合は、経済産業省が提供する「gBizIDプライム」の登録が必要です。
登録のためには、必要情報の入力のほか、申請書や印鑑証明書の送付が必要になります。
書類の精査が終わり、仮登録のメールが届くまでには1週間ほどかかるため、余裕を持って書類を提出しましょう。
必要書類の準備
法人がIT導入補助金を申請する場合、以下の2点の書類が必要です。
- 履歴事項全部証明書
- 法人税の納税証明書
これらの書類の準備もあわせて進めておく必要があります。
必要情報の入力
gBizIDプライムのアカウントがあると、IT導入補助金の申請マイページを利用できます。
申請マイページに必要情報を入力してください。
申請者側は以下のような内容を入力します。
- 企業概要
- 財務状況
- 経営状況
交付
審査を通過し、IT導入補助金の交付が決定すると、事務局から通知が送られてきます。
その後、ITツールの契約や発注を行ってください。
交付の決定前に契約・発注を行うと、交付が無効になるケースがあります。
まとめ
適切なツールを導入することで、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
ツールやシステム、ハードウェアの導入にはコストがかかりますが、IT導入補助金を利用することで軽減可能です。
コスト面からITツールの導入を先送りにしている場合は、IT導入補助金の利用を検討してみましょう。
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資格
一般建設業 東京都知事許可(電気通信工事業):(般-4)第148417号
古物商 東京都公安委員会許可(事務機器商):第304361804342号
労働者派遣事業 厚生労働省許可:派13-316331
小売電気事業者 経済産業省登録:A0689
電気通信事業者 総務省届出:A-29-16266
媒介等業務受託者 総務省届出:C1905391
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