
キッティングとは、PCやスマートフォンなどのデバイスを業務で使える状態に設定する作業をいいます。
PCをキッティングする場合、「PCキッティング」と呼ぶことがほとんどです。
今回は、IT担当者における業務のひとつ、PCキッティングの基礎知識をご紹介します。
PCキッティングとは?
PCキッティングとは、新たに導入したPCなどのデバイスを設定したり、必要なソフトウェア・アプリケーションをインストールしたりする作業をいいます。
「kit(キット)」が語源の用語で、業務に使うための「道具を一式揃える」という意味から、キッティングと呼ばれます。
PCキッティングに特別な資格やスキルは必要ありません。
ただし、PCの基本的な知識・スキル、ネットワーク関係の知識、コミュニケーションスキルがあるといいでしょう。
PCキッティングはIT部門内などで、複数人で行うことがほとんどです。
同僚や部下、上司との連携が重要となるため、必要最低限の協調性・コミュニケーションスキルは必要でしょう。
主な作業内容
PCキッティングの作業内容は、「開梱」「設定」「インストール」「管理情報の登録」を大別でき、これらのプロセスを経てはじめて、デバイスを業務で使えるようになるのです。
また、PCキッティングでは、CD・DVD・USBメモリなどのインストール用メディア、ネットワーク接続のためのLANケーブルやWi-Fiアダプタ、また、プリンターなどの周辺機器を使用します。
デバイスによって必要な道具・機器が変わるため、あらかじめ把握しておきましょう。
なお、後述する作業手順を踏むことでキッティング作業は進められますが、デバイス数によっては業務負荷が計り知れません。
IT担当者の人数が少なかったり、デバイス数が非常に多かったりする場合、PCキッティングをアウトソーシングするのがおすすめです。
専門業者に依頼することで、より高度な設定や効率的な作業が期待できます。
PCキッティングの作業手順
ここでは、PCキッティングの一般的な作業手順をご紹介します。
1.PCの梱包を開封(開梱)
開梱とは、PCや周辺機器のパッケージを開けて中身をチェックする作業のことです。
具体的には、PC本体・マウス・キーボード・モニターなどの各種周辺機器が適切にパッケージされていること、そして必要なパーツやアクセサリーがすべて揃っているかを確認します。
開梱の大切なポイントとして、パッケージング材やテープを切る際に、PCや周辺機器に傷をつけないよう慎重に作業しましょう。
また、梱包後はすぐに取扱説明書を確認し、全ての内容物が揃っているか確認します。
2.通電・起動確認
PCキッティングにおいて、通電・起動確認は大切な工程です。
PCが工場出荷状態であることを確認した上で、電源を入れて正しく起動するかチェックします。
すべてのPCの通電・起動確認が完了したら、次にOSの初期設定を行います。
3.初期設定
OSの表示言語、PCが使われる地域選択、日付・時間、使用するキーボードの型や配列などの設定を行います。
正しく初期設定することで、PCを業務に使用できる状態に整えるのです。
Windowsの場合、表示される画面にしたがって初期設定を行いますが、最後にユーザーアカウントとパスワードを設定します。
ここで作成するアカウント情報はPCごとに紐付けて管理するため、忘れずに保管してください。
4.ネットワーク設定
ネットワーク設定は、新しいデバイスを社内ネットワークへ接続する工程のことです。
この時点で、PCを社内のLANやWi-Fiにつながるため、Webや社内ネットワークのアクセスが可能になります。
ネットワーク設定は通常、PCに固有のIPアドレスを割り当てたり、DHCPを利用して動的に取得したりできるように設定します。
さらにユーザーアカウントやグループポリシーを適用し、企業内でプロキシサーバーが使用されている場合は、PCのプロキシ設定も行います。
最後に社内ネットワークのセキュリティポリシーに従い、PCのファイアウォール設定を行えば設定完了です。
5.業務用アプリケーションのインストール
業務に必要なアプリケーションをインストールし、ライセンス確認と認証、初期設定を行います。
一般的な業務であれば、メールクライアントの設定、プリンター・スキャナーの設定は必須です。
必要に応じてアプリケーションの設定をカスタマイズし、自社業務に最適化させましょう。
これには専門知識が必要とされるため、社内での対応が難しい場合は、専門業者に依頼するのが一般的です。
6.セキュリティ対策
自社のセキュリティポリシーにもとづき、PCにセキュリティ対策を施します。
まずはアンチウイルスソフトをインストールし、ウイルスやマルウェアから保護します。
データ漏洩防止のため、HDDやSSDの暗号化とファイアウォールの設定は欠かせません。
最後に、OSやアプリケーションのセキュリティパッチを適用し、ソフトウェアの脆弱性を修正します。
これらの作業により、さまざまなセキュリティリスクからPCを守ります。
7. IT資産管理台帳への登録
PCなどのデバイスは、企業にとっての「IT資産」に該当します。
そのため、新たに導入するPCは、「IT資産管理台帳」または「IT資産管理アプリケーション」に登録・管理する必要があります。
IT資産管理台帳とは、企業が保有するPC・スマートフォン・タブレットを一元管理するもので、その購入日や利用場所、管理者といった情報が記録されます。
これにより、IT資産のコンプライアンスの遵守やセキュリティ対策、投資の抑制が期待されます。
また、自社で「Active Directory」を利用している場合、同じく登録が必要です。
Active Directoryは、ユーザー認証およびアクセス制御を目的としたWindowsの管理機能で、「Windows 2000」以降のバージョンに実装されています。
これはセキュリティ対策と社内ネットワークの利便性向上を両立させる便利な機能です。
IT資産管理台帳あるいはIT資産管理アプリケーションとは別に、Active Directoryを利用しているなら、PCキッティングの段階で設定を済ませましょう。
8. 管理番号シールの貼り付け
PCなどのIT資産を一元管理するため、本体に管理番号シールを貼り付けます。
シールには資産番号・資産名・資産区分・購入日といった重要なデータが記載されます。
管理番号シールを利用することで、IT資産の把握や管理が簡単になり、万が一のトラブルにも素早く対応できるのです。
PCキッティングの注意点とは?
PCキッティングの注意点とは?
- 同梱物は保管しておく
- PCのインベントリ情報を集める
- 設定状態を確認する
意外と見落としがちなのが、PCマニュアルなどの同梱物の保管です。
開梱後、同梱物をそのまま捨ててしまう担当者は珍しくありません。
しかし、書類などはトラブル発生時に必要となる場合が多く、基本的には保管しましょう。
また、IT資産管理台帳には、IPアドレスやホスト名などのインベントリ情報を漏れなく登録します。
PCなどのデバイスは、あくまでも自社のIT資産として扱いましょう。
OSクローニングとは?
OSクローニングとは、マスターPCを1台作成した後、そのOSイメージを抽出・展開して複製することをいいます。
一度に大量のPCをキッティングできる手法で、IT担当者の業務負荷軽減や、品質のばらつきを抑えるために用いられます。
OSクローニングは、専用のクローニングツールを使うのが一般的です。
Windowsにおいては「Sysprep」、Mac OSでは「ユーティリティ」が標準搭載されており、無料で使用できます。
ただし、設定可能な項目・範囲に制約があるため、自由度や利便性は今ひとつです。
業務用PCをクローニングする場合、基本的には有料のクローニングツールを使うことをおすすめします。
OSクローニングの3つの方法
OSクローニングは、以下3つの方法で行われます。
- ブートディスクを使う
- PXEサーバーを使う
- エージェントを使う
もっとも一般的なのは、ブートディスクを使ったクローニングです。
USBメモリをブートディスクにし、マスターPCから抽出したOSデータを複製します。
その方法も細分化されますが、OSイメージの配信サーバーを用意し、新しいPCでアクセスしてクローニングするのが効率的です。
同様に、PXEサーバーを使う方法もあります。
新しいPCをネットワークブーストで起動し、PXEサーバーを経由してクローニングします。
エージェントソフトウェアを使ってクローニングする方法もありますが、これはPC環境の変更頻度が高い場合に有効です。
それぞれ一長一短あり、PCの使用環境や用途、クローニングしたい台数によって最適な方法が変わります。
OSクローニングの注意点とは?
OSクローニングの注意点は、以下の通りです。
- ボリュームライセンスを購入しておく
- ライセンス認証回数を確認する
クローニングを行うには、ボリュームライセンスに付属するOSの再イメージ権が必要となります。
再イメージ権がない状態でクローニングした場合、違法コピー扱いになるため注意してください。
同じく、購入したライセンスの認証回数の上限値を確認し、必要によっては上限値の引き上げを申請します。
業務開始後にトラブル・不備が発生しないよう、適切にクローニングすることが大切です。
PCキッティングはアウトソーシングできる?
上記の通り、PCキッティングは専門業者にアウトソーシング可能です。
たとえば、「スターティア」の「パソコンセットアップ ビジ助プラン」では、PCの初期設定からデータ移行まで、まとめて依頼できます。
ビジ助会員であれば、特別価格でPCキッティング・サービスを利用できます。
専門知識を有するITエンジニアが対応するため、詳細な個別設定やカスタマイズも相談できます。
PCキッティング・クローニングをアウトソーシングし、IT担当者の業務負荷軽減を図りましょう。
まとめ
IT時代の今、PCキッティングは企業に必要不可欠な作業となりました。
一方、見た目以上にPCキッティングは業務負荷が大きく、IT担当者が「きつい」と口にすることも珍しくありません。
社内のリソース確保、人材不足解消なども視野に入れた場合、PCキッティングはアウトソーシングするのがベストでしょう。
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